RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

誰よりも狙われた男@TOHOシネマズシャンテ 2014年11月8日(土)

封切り四週目。
席数201の【CHANTER-2】の入りは五割ほど。

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フィリップ・シーモア・ホフマン』の遺作で、
彼はドイツ諜報機関のスパイを演じる。

スパイもの、といっても、派手なドンパチがある訳ではなく、
地味な諜報戦が終始描かれる。

しかし、一つ先の展開は読めず、緊張感はラスト向かい
静かに立ち上がって行く。

一瞬たりとも目を離すこと能わずの秀作である。


ハンブルクでテロ対策チームを率いる『バッハマン』が目を付けたのは
トルコ経由で密入国したチェチェン人の青年『イッサ』。
最初の内こそ、テロを起こす可能性を念頭に置いていたのだが、
次第に彼の関心は異なる方に向いて行く。

そして、もう一人、
テロリストへの資金供給者として彼がマークしている大物『アブドゥラ』博士。

最初はこの両者が、どう結び着くのかがさっぱり見えないのだが、
やがて『バッハマン』が構想した壮大な計画が浮かび上がって来る。


前作の〔裏切りのサーカス(Tinker Tailor Soldier Spy)〕でも
タイトルにストーリー上の大きなヒントを盛り込んでいた『ル・カレ』だが、
本作に於いても、その大胆さは変わらない。

誰よりも狙われた男〕の原題は〔A Most Wanted Man〕で、ほぼ直訳。
観ながらも、(前回の例からして)何かの仕掛けがこのタイトルに
隠されているのだろうと思っていたのだが、どうにも判らない。

しかし、最後のシークエンスになり、アッと思わされる。
成る程、そうだったのかと。


此処で描かれるのは、自分達の権益や主導権を守るためであれば、
同じ部署の仲間や諜報員同士でも平然と裏をかこうとする非情な世界。

主人公の『バッハマン』は、見た目粗野そうだが、
言動の端々に「情」が見て取れる。

実際、軟禁はしても、暴力に訴えることはぜず、
なだめすかせ、理を尽くし、納得づくで協力者に仕立て上げる。

ぬるい、と言われればそれまでだが、
そこに演じた『ホフマン』の姿が重なり
ぴったりと嵌っている。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆★。

カポーティ〕での素晴らしい演技以降、
性格俳優的な側面が強く出、
次はどんな作品で楽しませてくれるのだろうと
心待ちにしていたのだが、本作が最後になってしまったことは
残念でならない。