RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

少年は残酷な弓を射る@TOHOシネマズシャンテ 2012年7月1日(日)

席数224の【CHANTER-1】は満席。

公開二日目に加え、「映画の日」だとしても凄い。

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世界中を自由気ままに飛び回り、
それを紀行文にして生活の糧にしていた『エヴァ』は
スペインでフォトジャーナリストの『フランクリン』に出会い妊娠、
『ケヴィン』を産み落とす。

しかし、その息子は、彼女がどんなに愛情を注いでも、
全く懐こうとしない。

人並み以上の知能や運動能力も有る筈なのに、
母親に対してだけは反発し、心を開こうとしない。

やがて『ケヴィン』は、外見こそ彼女そっくりに成長するが、
その悪意は度を増し、
遂には残忍な事件を引き起こす。


物語は複数の時代が並列して描かれる。

よって観客は、それらを時系列的に再構築し、
整理しながら理解せねばならない。


冒頭『エヴァ』が奔放な生活をしていることが提示される。
それは折に触れての描写で、実は子供が
彼女の自由を束縛する存在であったことを気付かせる。

次いで、彼女が町中の人々から
激しく排斥されていることが判って来る。
しかし、ここでは、まだ、その理由が判然としない。

やがて、生れ落ちた『ケヴィン』を仲立ちとした暮らし。
ここでの息子は、三歳にして、はや恐ろしい眼差しを見せている。

やがて妹の『セリア』が生まれても、
母親に対する息子の態度は変わらない。
そればかりか、その仕打ちは妹へも向かい始める。


中途に挟み込まれるシーンを勘案すれば、
『ケヴィン』が何をしたのか?の大凡の見当は付く。

しかし、彼が、
何故それをしたのか、
母親に何を感じていたのかは
最後まで理解できない。

シリアルキラーの心情が判らない様に、
観客はぽ~んと、置いてけぼりにされてしまう。

なので、帰り際に、人々が話す感想を
それとは無しに聞いていると、
あまりにも幅がある事がわかる。
全ての結論は、ここでは保留されているから。


予告篇の「すべてが明らかになった時、
ケヴィンの真意が、切ない衝撃となって胸を刺す」
なる惹句は、ある意味羊頭狗肉である。

我々は、そのラストシーンを前にして、
言い様の無い不安を持ち、戸惑うばかりなのだ。