RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

それでも夜は明ける@TOHOシネマズ渋谷 2014年3月14日(金)

封切り二週目に突入。
席数234の【SCREEN5】は三割程度の入り。

「作品賞」を初めとする
アカデミー賞」を三部門で受賞の効果は
朝イチの回では発揮されない感じ。

「PG12」であることから、客層は
やや高齢層に振れ、特に有閑そうなマダムの集団多し。

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原題は〔Twelve Years a Slave〕で、例によって
実話を基にしたお話であることが
最初に提示される。

「自由黒人」としてニューヨークでその特権を謳歌していた
『ソロモン・ノーサップ (キウェテル・イジョフォー)』は、
二人組みの男から持ちかけられたオイシイ儲け話に騙され、
仲介業者を通して南部の農園に奴隷として売られてしまう。

本作は、彼が再び自由の日を取り戻すまでの十二年間を
感情をかなり排除した、冷徹な視線で描き出す。


それにしても重い映画だ。
冒頭部、奴隷として売られるシーンから暫くの間は
過去をカットバックで挟み込んだり
アンゲロプロス』お得意の、一つの画面に複数の時代が共存するカットなど
趣向を凝らした編集でリズムがある。

しかし、それ以降は、ひたすら蹂躙する側と
忍従する側の描写が延々と続き、こちらの気分まで暗くなって来る。
それもこれも、最後のカタルシスに向けての長い長い序章。ただ同時に
複数の不合理も露になる。

ここでも見られた内容に加え、
本作では更に「自由黒人」という概念が提示され、
同じ黒人間にもある階級格差には慄然とした思いを抱いてしまう。

しかし、これら二つの作品は
アメリカでの)黒人の歴史と言う共通項を持っているわけで
何故に今頃、贖罪でもあるまいにとの疑問は、なかなか拭えない。


原題が示す様に、十二年経てば何らかの救済がされることは
始めから示されており、我々はその瞬間を忍従しながら待ち続ける。
焦らしながらのその提示は、何とも上質なモノ、
思わず唸ってしまった。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆★。

売り出し中の『ベネディクト・カンバーバッチ』や
人気の『ブラッド・ピット』には、比較的リベラルで良心的な人物の役割が割り振られている。

ハリウッド的な気遣いなのね、と思っていたら
何のことはない『ピット』様は製作に名を連ねていらっしゃる。
いい役、頂きました、ってことなのね。