RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

ウォルト・ディズニーの約束@TOHOシネマズシャンテ 2014年5月4日(日)

封切り一ヶ月半になろうとしている。
なのに、席数190の【CHANTER-3】は
八割方の入りと盛況。

客層は中高年の女性二人連れや母娘、
更にはカップルが多い。

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アカデミー賞』を5部門で受賞したミュージカル
メリー・ポピンズ〕の制作にまつわる一連の出来事を描く。

原題の〔Saving Mr. Banks〕にある『Mr. Banks』は当該作の登場人物。
原作者が彼の人に
強い思い入れがあることを指し示している。


ウォルト・ディズニートム・ハンクス)』にとって
二十年来の宿願であった〔メリー・ポピンズ〕の映画化は
原作者の『パメラ・トラバース(エマ・トンプソン)』の許可が下りずに難航していたが
粘り強い交渉の末、彼女をハリウッドに「脚本監修者」として招聘することに成功する。

しかし、その制作現場は苦難の連続。
頑迷な『パメラ』は脚本・詞・曲・役者等の全てに対してダメ出しをする。
が、それには彼女なりの理由があった。


スタジオ内の議論と、
彼女が育ったオーストラリアでの生活描写が交互に挟み込まれ、
観客は次第に『パメラ』の精神の内側までをも理解する様になる。

全てが時系列に沿って展開されるので
観ている側は非常に判り易い。

また、『パメラ』が忌避する幾つかの要件についても、ことの次第を
隠喩ではなく目に見えるカタチでの正解を提示する親切な造り。

この手管は、万人に素直に受け入れられる
『ディズニー』的なモノを踏襲している様だ。


精神分析的な構造ではあるものの、
『パメラ』が映画制作に参加する過程で、
再び自身の過去と向き合い、そして
物語りを書いた時とはまた別の方向性で
忌まわしい記憶を許容することになる。

更に自身の実際の家族が
メリー・ポピンズ〕の登場人物達に投影されていることが
制作者サイドに雰囲気として了解されることで
『パメラ』の頑なな態度も次第に氷解して行く一連の流れは
あざとくはあるものの、観ていてほろりとさせられてしまう
秀逸なシークエンスだ。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。


制作と配給に、何れも『ウォルト・ディズニー』を冠した会社が
クレジットされていることから判るように
此処での『ウォルト』は忍耐強く人の心も汲み取る
一種慈父に近いカタチの描写となっている。
事実はどうだったのだろう?

当時の録音テープが再生する
『パメラ』と制作スタッフ達の実際のやり取りを聞くと
彼女の発言は至極尤も。
映画をより良いものにしたい熱意が伝わって来る。

要はそれらを含めて、
かなりのオハナシとして脚色されているのだろう。