RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

大統領の執事の涙@品川プリンスシネマ 2014年2月16日(日)

封切り二日目。

席数219の【シネマ5】の入りは
八割程度と盛況。

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南部の荘園に黒人奴隷の子供として生まれ、
横暴な領主に父を射殺され
母を廃人にされた『セシル・ゲインズ(フォレスト・ウィテカー)』は
やがてそこを飛び出し、
拾われたバーでのバーテンを皮切りに、
ホワイトハウス」のバトラーにまで昇りつめる。

本作では、数奇な彼の一生を
・仕えた歴代の大統領
・黒人の公民権運動
・彼の私生活
の三つを並行して描くことで
合衆国での黒人の歴史を総覧できるようになっている。


しかし、本編で言及される内容は
驚くことばかり。

南北戦争」の六十年後でも
奴隷制度は連綿と続いており、
白人が黒人を殺しても罪には問われない。

第二次大戦後もなお、公共の場での人種の分離は続いている。

やがて「公民権運動」に繋がって行き、
2009年には『オバマ』が大統領になるのだが、
バトラーの『セシル』はあくまでも狂言廻し、
本作の実際の主役は「アメリカでの黒人」なのだ。


そう言った意味で、
原題の《The Butler》は(当たり前だが)正鵠を得た表現。
相変わらずの「感動作ですよ」とするための
客寄せパンダ的なチンケな邦題を付けた
配給元の『アスミック・エース』には猛省を促したい。




なので、歴代の大統領の素行の描写も
あくまでも黒人関連の法案や政策に
どう対処したかに(ほぼ)限定される。

多くの政治家達は、表向きでは平等を語っていても
裏では正反対の信条を持っている事や、
差別が一番無い筈の「ホワイトハウス」が
実際は給与や待遇の面で
直近まで黒人差別を続けていた事実には愕然とさせられる。

黒人の側も『セシル』の様に、古い考えを持ち続けるものもいれば
(だから、最終的には「ホワイトハウス」の執事頭にまで出世できた)、
彼の息子の『ルイス』の様に、解放運動に身を投じる先進的なものもいる。
そう言った二面性の相克もここでは描かれるのだが、
では現時点で、全てが融和しているかと言えば、甚だ疑問だろう。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。


ロビン・ウィリアムズ』や『ジェーン・フォンダ』、
マライア・キャリー』と言った大物達が、
大統領やその夫人、近隣住人等のちょっとした役で出ているのを見つけるのも
かなり楽しい。