RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

ケープタウン@チネチッタ川崎 2014年9月1日(月)

封切り三日目。

席数138の【CINE 3】の入りは八割程度。
「R15+」だけあって、客層は高齢に振れ、
おまけに単身での来場が多いのも特徴か。

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黒人・カラード・白人が混在し
犯罪が多発する街、ケープタウン

そこで起きたアッパークラスの白人少女の殺人事件を
二人の刑事が追う。

一人は『アリ・ソケーラ(フォレスト・ウィテカー)』。
本編の原題〔Zulu〕の元となっている、
南アフリカの主要民族の出自。

もう一人は『ブライアン・エプキン(オーランド・ブルーム)』。


しかし、この二人とも、
家庭生活では問題を抱えている。

『アリ』は幼少の頃の黒人迫害の後遺症を抱え、『ブライアン』は
その放埓な生活がたたり、妻からは三行半を突き付けられ、
子供からは親とも言えない扱いを受ける。

物語りは二人の裏の側面も、きっちりと描き出す。


少女の惨殺に向き合う彼等の周りでは、
子供達の集団疾走や麻薬の密売などの、
あまり関係の無さそうな事件が並行して起き、
やがてそれらが一本の糸に繋がって行く。


手掛かりが観客の前に少しづつ開陳され、
解決への筋を追って行く順序だてた流れは
さながら本編の主人公達が真相に行き付く過程を追体験するかの如く
緊迫感に満ちている。


しかし本作で最も心を打たれるのは、そこではない。

一見ストイックで公正にも見える『アリ』が
実は自分の”血”に抗えずにおり、
それが南アフリカが過去の歴史から完全に脱しきれない、
混沌とした状況の表象となっていいることが
きりきりするほどの痛みを持って伝わって来る。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆★。


ラストのシークエンスは、
個人的には望ましい方向性であるものの、
それでカタルシスを得ることはなく、何とも苦味に満ちたものなのだ。