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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

許されざる者@チネチッタ川崎 2013年9月23日(月)

封切り二週目に突入。

席数138の【CINE 3】は九割方の入り。
客層は高齢のカップル(所謂、夫婦ってやつ)の比率が極めて高し。

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元ネタは
イーストウッド』の「アカデミー」受賞作。
それを独自の視点でリメイク。

邦画がハリウッド作品を本歌取りするのは
直近では極めて珍しい。

人物の造形や関係性に多少の違いはあるものの、
基本プロットは原本通り。


しかし舞台を明治初期の蝦夷に移したことで、
また異なる情景が眼前に現れた。

官軍と幕府軍の、
更には同じ官軍でも薩摩と長州の
開拓民とそうでない者と、
アイヌと和人の
底辺で生きる女性とそれを支配する男性の、
様々な階層が輻湊的に立ち上がる。

そして、主に使用する武器が日本刀になったことで
殺陣のシーンに厚みが増した。
人斬りと称された主人公の凄みが表現される。


監督的には、時代と舞台の設定が
日本に移植する際のキモであったのだろう。
馬を使うことに不自然さが無く、
複数の差別が並列し、
懸賞金が掛けられてもおかしくはない時空。

これを思い付いた時点で
本作の成功は約束された様なもの。


主演の『渡辺謙』は人斬りとしての本分を発揮した時の
眼の演技が素晴らしい。

警察署長の『佐藤浩市』は自分の正義を振りかざし、
しかし、悪人には見えない微妙に揺らぐ性格付けが
良く出来ている。

一方、アイヌと和人のハーフを演じる『柳楽優弥』は
観る度に演技が下手になって行くようだがどうだろう。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆★。

オープニングから物語世界の中に取り込まれ、
二時間強の長尺を一気に魅せ切られてしまう、
本年の邦画屈指の出来ではあるものの、
本歌があると言う一点だけがつくづく惜しい。