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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

夏の終り@チネチッタ川崎 2013年9月1日(日)

いやあ、それにしても凄い人。

発券で並び、入場で並ぶ。

夏休み最後の日曜だからと、
ある程度の覚悟はしていたけど、
当館がこんなに多くの客で溢れているのは初めて見た。


が、封切り二日目の本作、
席数191の【CINE 10】は七割程度の入りと、かなり寂しい。

客は中高年の女性が多く、
おそらくは原作者に何らかのシンパシーを感じている層か。
そう言えば、つい先日「朝イチ」にも出演していたし
主要媒体で最近見かける機会が多いのは、
ある意味メディアミックスとも言えるな。

しかし、いくら日頃映画館に来ない人達だからと言って、
上映中に携帯で話すのは止してもらいたい。
事前のシネアドでも、あんなにしっかり告知されてるんだから。


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染色家の『相澤知子(満島ひかり)』は
週の何日かを妻子ある初老の作家『小杉慎吾(小林薫)』と過ごす生活を続けて
もう八年になろうとしている。

それは『小杉』の妻も認めている事とは言え、
例えば自分が病で伏した折などは、
それなりに寂しさも感じられる。


或る日『木下(綾野剛)』という男が
『知子』の自宅を訪ねて来る。

二人は田舎で幼馴染、
恋心も抱いた中だったのだが、
どうしてか疎遠になっていた。

二人の男と、一人の女の間に起きたさざ波が、
次第に大きなうねりとなり、
やがて三人は何回目かの人生の岐路に立つ。


静かな映画だ。

基本カメラもどっしりと構え、
ローアングルからの長廻しの画面は
次に起こるドラマの期待から
常に緊張感をはらむ。


此処での登場人物は
三人が三人とも、かなりの振れ幅で感情を吐露する。
また、時に利己的、時に唐突に相手を思い遣る。

しかし、それらは傍から見ていれば
全てが自分がどうすれば心地良くいられるかに立脚し、
余り共感を感じることはない。


三人の過去、『知子』『小杉』の馴初め、
『木下』との関係は都度カットバックで挿入されるのだが、
時系列的には自在に動き過ぎ、
観客は相当の想像力を以って
その間の事情を補う他はなく、
我々は薄っすらとしか、思い至ることができないのだ。


奇妙な閉塞感に囚われた三人の関係は
あることを契機に爆発するのだが、
これは男二人からの頸木を外したことに止まらず、
女性としての社会的な自立を獲得する
『知子』の物語と見るのが妥当ではないだろうか。


評価は☆五点満点で☆☆☆★。

季節を意識した公開のタイミングだが、
まだまだ残暑は厳しく、
夏は当分に終りそうもない。

本編は二時間弱しかないのに、
妙に長く感じられたのは、
同じようなシュチエーションが
場を変えて繰り返されるからだろう。