RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

そして父になる@109シネマズ川崎 2013年10月13日(日)

封切り三週目に突入。
席数の246の【シアター1】は九割方の入りで盛況。

割引デーでもないのに
この状況は凄い。

主演男優の人気に加え、
カンヌ国際映画祭 審査員賞」受賞の効力は大したもの。

客層も、中学生くらいの女子二人連れが居るかと思えば、
かなり高齢の夫婦(たぶん)もおり、
ホントに幅広い。


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いみじくも劇中で語られている様に
「赤ちゃんの取り違え」は自分が丁度思春期の頃に発覚し、
しかも数件が一挙に明るみに出たことで
往時、相当の露出でニュース等に取り上げられた記憶がある。

それが本作の舞台の現代に起きるのは
それなりの伏線があるのだが、
寧ろ人と人との繋がりを描くために
借りて来た側面が色濃い。


また、過ごした時間の濃密さか
血の濃さの問題なのかは〔秘密7 清水玲子〕でも
描かれている如く、より富や権力を持っている方が、
「血」に固執する傾向が強くあることは、
多くの歴史も物語っている事ではあり、本作の主人公も御多聞に漏れない。

彼は所謂エリートで
挫折を知らずに出世の階段を駆け上がり、
仕事上では人望も厚い。


取り違えられたもう一方の家族は、地方で小さな電気店を営み、
他に子供も二人、老いた祖父には知的障害が出始め
生活はけして楽ではない。
が、家庭内に笑いは絶えず、常に明るさが漂っている。

富と貧、陰と陽と、対比的な二つの家族が
思わぬ事態を巡って困惑する。


しかしここでは、人物の背景となる設定や
エピソードの積み重ねが頗る上手い。

主人公の父親の見識や上司の何気ない一言、
一方で彼の母は継母であるとの生育環境。

幼い頃の実母との関係、
そして妻との馴初めや今の生活が、
或る時は短い会話で、
或る時はショットで雄弁に語られ、
我々はその人となりを次第に理解する。


病院から勧められた、子供の交換という選択肢を
どう処理するかは観てのお楽しみだが、
それなりに得心できる経緯に基づいた
納得できる落としどころだろうか。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆★。

静かな造りながら、その裏では強い意志が働いている
骨太な一作に仕上がっている。

ただ、世に評価される監督独自の演出だが、
親子間の会話が、妙に他人行儀になっている箇所もあり、
場面ごとに善し悪しがあると感じた。



一方、まるっきり同じようなシチュエーションながら
さらに厄介な「民族」の問題を取り込んだ
『もうひとりの息子』と言った作品もあり、
これも鑑賞すべき一作か。