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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

ななつのこ:加納明子~読了

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新聞の書評欄で気になって購入。

1999年に初版が出され、本年7月で18版を数える。
第三回の鮎川哲也賞の受賞作。
同賞は『東京創元社』が募集する、推理小説作家の新人登竜門。
と言うことは、本作も”推理小説”の位置づけとなるわけだ。


『駒子』は(〔雪国〕みたいな名前だが)は短大の一年生で、
取り立てて事件も無い平凡な毎日を送っている。
ある日、書店でふと目にした本の表紙に心引かれ、
手に取り、購入する。

そして読み終えた直後、作者の『佐伯綾乃』にファンレターを出そうと、
唐突に思い立つ。
書き終えたその手紙の中には、本の感想と共に、最近身近で起こった
不可解な出来事も書き添えられていた。
それは、まるで彼女が買った本〔ななつのこ〕の内容に触発されたように。

やがて、『佐伯綾乃』から返事が来る。
そこには『駒子』が思ってもいなかった内容が記されていた。それは・・・・。


壺中壺ならぬ話中話。

本書のタイトルは、そのまま『駒子』が読んだ、七話連作の本のそれと重なっている。
そこでもある謎が提示され、解法が明かされる。
ホームズ役はサナトリウムで療養中の『あやめさん』。
ワトソンは村の小学生『はやて』。

謎とも言えない、事件とも言えない、些細な出来事だが、
本人の心には棘の様に刺さっているそれを『あやめさん』が
柔らかに快方に導く。

そして現実の世界でも、〔ななつのこ〕の一話に繋がるような出来事が・・・・。
ここでのホームズは『佐伯綾乃』、ワトソンは『駒子』。

そうと知ってよ~く読めば、かなりの謎は答えに至ることが可能だし、
若干ご都合主義で、また違う解釈が出来そうなものも幾つかある。

そこを上手く疑問を持たさずに読ませるのも、本書の妙味だろう。
身辺でのありがちなことも、意外な背景が隠れているのかも、
と思わせ、軽妙な一作となっている。

この後シリーズ化され、第三弾まで出版されているようだが、
二弾以降を読むかは、少々微妙だな。