RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

永遠の0@チネチッタ川崎 2013年12月23日(月)

封切り三日目。
席数488と当該シネコンで最大の【CINE 12】は
七~八割程度の入り。

客層はやや高齢に振れ、
同じ「ジャニーズ系」でも、『岡田』くんのファンは、
年齢を重ねた女性が多いのね、と
得心する。

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祖母が亡くなり、その火葬の席で、
今の祖父とは血の繋がりが無く、
本当の祖父は先の大戦で戦死したことを初めて知った
司法浪人の『佐伯健太郎三浦春馬)』は
姉『慶子(吹石一恵)』に誘われるまま、
実の祖父『宮部久蔵(岡田准一)』の足跡を辿る為、
戦中の『久蔵』を知る人から話を聞き出す。

が、殆どの人が祖父について
「海軍一の航空技術を持っていたが、臆病モノであった」と
「命を惜しむ男であった」と
誹謗・中傷する言葉が重ねられられ、
健太郎』は次第にくさって行く。

しかし中途から、『久蔵』の異なる一面が語られだし、
健太郎』の祖父への見方は一変する。

果たして、『宮部久蔵』とは何者であったのか。


こなれた映画だ。

原作をどこまで踏襲しているかは知れないが、
一篇の人物伝として立派に成立している。


もう一つ、本作を表現するに相応しいのは
二項対立。

戦後六十年を経ても、
未だに戦中の価値観や考え方を引き摺っている人々、
一方、戦時中でも現代的な思考を体得し、
それを実践する人達。

勿論、『宮部久蔵』は後者の側の人間で、
現在に活きる我々にとっては当たり前の思考なのだが、
依然として、それを受け入れられない一群の人々は
厳然として存在する。


多くの人から聴取を重ねることで、
亡くなった祖父が何故特攻を志願したのかが
浮かび上がって来る経緯の描写は見事だし、
幾つかの事柄については、きちんと伏線も張られている。

また、『久蔵』を評価する登場人物は、
皆、夫々が関わり合っており、
それらがぐるりと廻って、
現在を生きる彼の孫達に帰って来る脚本も
上等の出来だ。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆★。

原作は未読。

作者の『安倍』首相を礼賛する日頃の言動は
かなり鼻に付くが、本作はそれと
対極にある仕上がりと見た。