RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

まき村@大森海岸:和食

場所は【大森海岸】から【立会川】方面に5分ほど歩いた
京急の高架脇。

以前はもっと【大森】に近い場所にあったのだが
数年前に、こちらに移転して来た。

昔から行きたい店の上位にリストアップしていたのだが、
なまじ近所だと却って後回しになってしまう。

6月の、とある水曜日に訪問しようと
十日前に予約の電話を入れるも既に満席。
二日後の金曜ならば空きありとのことで、
そちらでお願いする。

コースは一万円と一万三千円の二種があり、
高い方を予約時に選択。


店内は六席のカウンターに個室が幾つか。

当日も満席で繁盛の度合いがうかがい知れる。

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白木の折敷は時節柄、爽やかさを醸している。
箸置きも随分と洒落ている。

酒類は若干高目の値付け。
市価の大体三倍位か。

それでも、焼酎をオーダーすれば
厚手のゴブレットでチェイサーが付く。
お代わりをすればコースターごと取り替えると、
細かいサービスは満点。


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《食前酒》が出される。
梅酒のロック。
甘過ぎず、酸っぱ過ぎず、果実味がこなれて良い塩梅。
これで食欲はいや増す。


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先ずは《素麺》。
海老の出汁に酢橘が絞り込まれ
さっぱりとした味わい。
麺も髪の様に細いのだが、それでいてしっかりとしたコシ。
喉越しも滑らかで、一気呵成にずるずると食べ切ってしまう。
椎茸の味付け、錦糸玉子の細さも、麺と出汁に吊り合っている。


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《玉蜀黍の素揚げ》
緑釉の上に黄色が映える。季節らしい一品。
玉蜀黍の甘味が尋常ではない上に、歯ざわりも滑らか。
揚げ加減も上々で、熱々の甘い汁が口の中に飛び出る。


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《椀》は玉子豆腐に鮑。
出汁が、出汁が、素晴しい。
滋味がカラダ中に染み渡る。
鮑は、厚みがあるのに軟らか。
玉子豆腐も、日頃食べているそれとは(当たり前だけど)別モノ。
真っ当に造れば、こんなに滑らかな口当たりになるんだな。


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《鱧》
掛かっているのは梅と、
鱧の骨からとった出汁を煮詰めたジュレ
梅は勿論御定法だが、素材それ自身の味で補強された
出汁も、やはり美味しい。
アップにすると、
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こんなに細かく骨きりの包丁が入り、美しい花が咲いている様だ。


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《お造り》は鮪とあおり烏賊。
添えられているのは、蓮芋の茎、山芋、若布。
厚みのある烏賊が甘味と、ねっとりとした食感で素晴しい。
包丁の目も細かい。


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《焼き物》は鮎の一夜干しと食用鬼灯。
干した鮎を食べるのは初めてだが
十分に薫香がする。加えて、適度に水分が飛び、
旨味が濃縮されている。
お約束の蓼が添えられ、
最初は苦味の強いバジルかと思った。香りも良い。
鬼灯の色は外観と同じ肌色。
勿論、これを食すのも初めて。
程好い甘味。


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《しゃぶしゃぶ》
この絶妙な火の通り具合はどうだろう。
ほんのりと赤さが残りながらも、
きちんと旨味が活性化している。
軟らかいことに加え、牛らしい旨味が十分に味わえる。

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付けダレも胡麻以外に各種ナッツの類が粉砕されて入っており、
味に深みが加わっている。


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《焚き合わせ》
蛸、南京、赤ピーマン、オクラ、茄子。
蛸は軟らか。入れ歯でも噛み切れるだろう。
南京のしゃくっとした歯応えは、家庭では再現できない技かも。
茄子も旨味を含んだ厚い身が、口の中で解れて行く。


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これが+3,000円の《スペシャリテ》。
野菜はアスパラと芋茎。
殻から出されたままの形の雲丹。
厚みのある鮑。
葛粉で軟らかくとじられている。
雲丹は濃厚。
鮑はこの厚さでも軟らか。
御寿司屋さんで食べる煮鮑とは
また異なる食感。
量もたっぷりで、これは幸せだ。


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《鯛茶》
大きく切られた鯛がたっぷりと盛られ、
胡麻ダレが掛かっている。

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ご飯は土鍋で炊かれ、艶々と輝いている。

最初は、ただ、ご飯の上に乗せ、
それだけで頂く。

中途からたっぷりの出汁を注いでもらい、
さらさらと茶漬けに。

これを本当の口福と言うのだろう。

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添えられた香の物と海苔を共に、
炊かれたご飯、全て食べ切ってしまった。

特に、おこげに出汁をたっぷりと注いで食べた時には、
もう懐かしさで涙が出そうになった。


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《デザート》は西瓜ジュースとメロン。

西瓜は「ただ、ジュサーに掛けただけ」とのことだったが、
不思議と和が香る。

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メロンにはオランデーズソース。
これが、果物本来の味を邪魔していない


お酒を随分と呑んだので、
税・サービス料込みの払いは二人で3.6万円。

それでも満足度は高く、
今度は松茸の季節に行きたいと思わせる。


追記-
器も、銀の塗り、ギヤマンと季節を意識したもの。
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店内の丁度類にも、主の好みがかなり反映されている様だ。
お手洗いには香炉まで置かれている。

随分と前に『ASO』@代官山に行って、
その後『ミシュラン』の☆☆に格付けされた時に、
成る程、こういったレベルなのだなと、
妙に納得した記憶がある。

本店も同様に、☆☆のランク。
良い物を食べて記憶するのは、
大事なことだと改めて思う。


店の入口脇に、暖簾が下がった小さな一角が設えてある。
何だろうと覗いて見たら、喫煙スペースだった。