RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

プロミスト・ランド@TOHOシネマズシャンテ 2014年9月14日(日)

封切り四週目。
席数224の【CHANTER-1】は満員の盛況。


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アメリカの良心」を描いた映画は過去から数多。

手垢の付いたテーマだから、再生させるには何か
一捻りを加えないと。

油田開発や原発誘致なんてもう古いし、
シェールガスなんて、イマドキでいんじゃない。
地球温暖化との対立軸と、
一方でその採掘方法が環境破壊を誘発するという説もあるし。


マット・デイモン』が主演と共に、制作と脚本にも関与している。


良質なシェールガス鉱の埋蔵が期待される
さびれた田舎町の土地買収のため
大規模資本が送り込んだ
『スティーヴ(マット・デイモン)』と
『スー(フランシス・マクドーマンド)』
の二人の社員。

『スティーヴ』は貧しさから脱することが
最上の幸せをもたらすと、
開発で得られる金がその近道と信じ込み、仕事に邁進する。

実際、今までは口八丁手八丁で抜群の業績を上げ、
幹部への昇進も目前。

今回も何時も通りに順調に契約を進め、容易な業務となる筈だった。
が、些細なことが契機で綻びが生じ、
ほんの二三日の滞在予定が数週間の逗留を余儀なくされ、
その間の出来事が、彼の心情に変化をもたらす。


貧しい辺地の農家暮しを嫌い飛び出した主人公は、
やり手のネゴシエーターであるはずが、
『スー』にこそ、その片鱗は見えるものの、
本人にはまるっきり、やり手の影もない。
所謂、「良いヒト」なのだ(それは劇中でも繰り返し語られる)。

相棒である彼女にしたところで、
地元に残して来た息子とのチャットを通じたやり取りや、
オルグして廻る地方の人間と仄かに心を通わせたりもするのだが、
何の為のエピソードかも判然としない。

両人共にイイ役をやらせようと
頭でっかちの意識が先行し、性格付けが甘くなってしまったのが残念。

善意の人間を演じさせたい気持ちが先走り、
人物の造形に深みがない。


お金は幸せへの必要条件ではあるけれど、
十分条件ではない。

分不相応の金を持った個人や地方自治体が
どのような路を辿るかは、歴史が証明している通りだろう。

幾つかの小さな、しかし微笑ましいシークエンスを積み重ね
説教臭くならぬようそれを描く手腕は悪くはない。


ただ、「社会派」と「ヒューマンドラマ」の二つを
上手く融合させ一本に仕立てる試みは
勿体無いコトに上手く行った、とはとても言えない。


評価は☆五点満点で☆☆☆★。


ではあるが、
大企業の非情さを見せつける挿話は極めて良く出来ており、
タネを明かされるまで、全く気づきもしなかった。

唯一の収穫と言えるだろう。