RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

探偵はBARにいる@109シネマズ川崎 2011年9月19日(月)

連休の最終日に加え、「ポイント会員感謝の日」ということもあってか
さほど広くは無い121席の【シアター5】は満席。

客層は万遍無いが、比較的、若い方に振れている。
「ハードボイルド」モノで、これは珍しい。


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「北大農学部」の助手『高田(松田龍平)』を片腕に
【すすきの】をメインフィールドに探偵を生業とする
『俺(大泉洋)』は、依頼人からのシゴトを果たすために、
今日も危ない橋を渡っている。

そんな彼の連絡先『BAR KELLER OHATA』に
掛かって来た電話は、『近藤京子』を名乗る女性から。
その依頼は何とも不可解なモノだった。

困惑したような女性の声に、まんまと引き受けてしまう『俺』。
それは以降に起る、大いなるトラブルの序章となるものだった。


正直言って、さほど期待を持っていた訳ではない。
日本映画でこの手の作品が、上手く行った例を、
あまり知らないし。
成功作品が有ったとしても、それは妙に無国籍風に処理され、
この国の風土からは、乖離した雰囲気を持つものだった。

ところが本作、
先ずは【札幌】を舞台に選んだ事が
成功の、その一。
地場にしっかりと根を下ろし、
この場でなければ成立しない雰囲気に満ち満ちている。

次ぎに『大泉洋』を主役に配したのが、
成功の二。
甘い、とぼけた様なマスクは、{ハードボイルド}にはどうかと思っていたが、
以外やぴったりと探偵の役柄に嵌まっている。
それは、何度かみせる、ハダカの上半身からも伺い知れる。
要は、しっかりとしたカラダ造りをしている。


脚本は勿論、良く練られている。
『近藤京子』は誰なのか?
と言う、本作のKEYを構成する謎は
予告篇を観た時に想定していた人物を否定する材料が
次々と提示され、我々は次第に混乱してしまう。

また、シーンの繋ぎが良い。
無駄なカットはほぼ皆無。
何れもが見事な伏線として機能し、
終映と同時に、「あ。これは最初から見直さなければ」
と思わせる仕掛け。

カメラも凝っている。
こうで無ければ機能しないであろう構図やワークが、
ぴたりと決まっている。

そして、魅力的な登場人物。
依頼人の『松尾』、
幼馴染の組頭『相田』、
客引きの『源ちゃん』、
行きつけの喫茶店の娘『峰子』。
何れも、一癖あり、個性的で、魅力的だ。


『俺』のモノローグが狂言廻しとなり、
些かのうそ臭さは漂うものの、
アチラの文化のモノガタリを、
日本のそれに置き換える試みは、
九割方成功しているのではないか。

あとは、若干のオーバーアクトと、
探偵的に有り得ない所作(BARで大声を出すとか)が
矯正されれば、続編の製作も十分にアリだろう。

その語り口を含めて、今までには無かった、
新しい分野の傑作の誕生と言っても過言ではない。