安藤陽子 －ポートレイト 静かな光－展＠INAXギャラリー 2010年9月4日(土）

全く新しい体験だ。
”絹本彩色”と書いてあるからには、
顔料を使った日本画の手法なのだろう。

本来であれば、軸や屏風の上に定着させるものを、
そのまま魅せる事で、独特の雰囲気が表出されている。

展示されている十点は、顔だけがぼやっと浮かんでいる。
輪郭もはっきりしないその描写は、熱波の最中にシャッターを押した
写真の様だ。

おそらく一度写真に撮ったものを絹本に定着させる作業が、
三次元のものを二次元に、リアルがバーチャルへと変容し、
アニメの様な半身を持った表現へと移り変わっている。

しかし、何れも半眼の顔たちは、
弥陀の様に神々しくさえある。

全ての顔に囲まれた、部屋の中央に立つと、
静謐な波動が流れ出し、次第に落ち着いた雰囲気が満ちてくる。

外気温が３５℃を超える中でも、
ここでは青磁の、しかし何かしら懐かしく軟らかい空気が満ちている。

同ギャラリーでの、本年ベストの展示。