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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

愛、アムール@チネチッタ川崎 2013年3月23日(土)

席数138の【CINE 3】の入りは
七割程度で、封切り三週目のこの盛況は
大層なものではないか。

当然の様に、客層は高齢者が多いのだが、
中でも老人のカップルが目立っている。

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アカデミー外国語映画賞」を含め
相当数を受賞している。


パリのアパルトマンに住む
『ジョルジュ』と『アンヌ』の老夫婦。

共に元音楽教師だったこともあり、
特に不自由の無い暮らしを送っている。

が、ある日、『アンヌ』が梗塞を起こし
半身不随になってしまう。

ヘルパーの助けも借り、
献身的な介護を続ける『ジョルジュ』だが、
彼女の病状は、次第に悪化の一途を辿り、
彼も次第に追い詰められて行く。


主要な登場人物は、過少である。
エンドクレジットでも、数人程度。

実際に奏でられる音楽以外には、BGMも排除されている。
これはエンドロール時にまでと、徹底している。

舞台は、ほぼ室内に限定されている。

加えて、カメラはドキュメンタリーの様に
しっかりと構えて、ほぼ動かない。
緻密なカットが積み上げられた映像は、
介護の日々を、透徹した眼差しで捉えて行く。

『アンヌ』の容体が次第に悪化するのが
『ジュルジュ』と同じレベルで感じられる。

なので我々は、ひりひりとした痛みにも似た、
激しい緊張にさらされる。


オープニングの短い幸せな時間から
打って変わっての、人生の最後に与えられた試練が
尺の殆どを使って描写される(若干冗漫な箇所も散見される)。

画面に眼が張り付き、引き剥がせなくなってしまう。


『ジュルジュ』の判断や決断は、二人しか判らない
愛情の昇華とも見ることができるが、
なまじ同年代になるまで、残り数十年の自分にとっては
とても他人事としていられないし、
劇場に居た観客の多くが同じ感慨を持ったろう。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。

映画自体の完成度は高いのだが、
あまりにも身につまされてしまい、
観終わっての想いはかなり苦い。