RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

カラスの親指@TOHOシネマズ川崎 2012年12月1日(土)

席数150の【SCREEN4】は、小さいながらも
八割程度の入り。

客層は、若年~高年まで万遍無いが、
カップルが多いことに変わりは無い。

しかし、本作、
封切り一週間目と言うのに、
最早多くの劇場で縮小上映となっている。

予告編は面白そうだったのに、
そんなにダメダメな作品なのか?
それとも二時間四十分という長尺が
障害なのか?

イメージ 1


『武沢竹夫(阿部寛)』と『入川鉄巳(村上ショージ)』は
コンビで詐欺行為を働き
小金を稼いでは糊口を凌いでいる。

そんな彼らの元に、ひょんな事から窮地を救った
『まひろ(能年玲奈)』と『やひろ(石原さとみ)』の姉妹が
用心棒と名乗る『石屋貫太郎(小柳友)』を連れて転がり込んで来る。

次第に疑似的な家族関係を結び、
それなりに楽しく暮らしだした彼等だが、
周囲に不穏な影が動き出す。

『竹夫』は、闇金の組織を警察にリークした過去があり、
そのことで恨みを買っていたのだ。

いよいよ追い詰められた『竹夫』達は、得意の詐欺のテクニックで
組織の裏をかくために動き出す。


いや、むちゃくちゃ面白いんですけど。
長い尺は、あっと言う間に過ぎた。

緩急やメリハリと言う表現は、本作の場合
当てはまらず、
均等な悠久な流れで、最後まで魅せ切ってしまう。
何処を取っても、無駄なシーンが無く、
全てのカットがジグゾーパズルの様に
ぴたりと嵌まる。

時として長廻しを、時として画面の余白を取りながら、
シーンに応じた最適な撮影がされている点も見事で、
凡百な映画を超えている。


劇中で「コンゲーム」であることを意図的にさらし、如何にも
代表作とされる《スティング》へのオマージューであると見せながら
本当の観客を騙すポイントは別の処に在るという、
原作は勿論だが、脚本の流れも絶妙。


批評家の論評では、
村上ショージ』の出来を推す声が大きく、個人的には
そんなことあるわけないと、高をくくっていた。

が、観終わって、固定概念に縛られていた自分を、
素直に恥じる。
実は彼の起用こそがキャスティングの要であり、
余人をもって替え難く、
配役が成った時点で、
この映画は成功を約束されたようなものだったのだから。
それ程、本作での彼の存在意義は大きい。
所謂、居ることに、価値がある。


次々と予想を裏切る展開は当然だが、
我々の眼前に提示される殆どのカットが
伏線として機能していることも驚き。

また、徒にカットバックを多用せず、
会話だけで、それらをキチンと説明した
方針も見事だ。

年末に封切りされるに相応しい、
超力作と呼んでも過言ではない。