RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

ブルージャスミン@109シネマズ川崎 2014年5月10日(土)

封切り初日。

席数121の【シアター5】は満員の盛況。

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NYでセレブ生活をおくっていた『ジャネット(ケイト・ブランシェット)』だが
詐欺まがいの商売をしていた夫『ハロルド(アレック・ボールドウィン)』が逮捕され
自身も無一文に、都落ちよろしくサンフランシスコに住む
血のつながらない妹『ジンジャー(サリー・ホーキンス)』の元に身を寄せる。

そこでの再起を誓い、新たな裕福な暮らしを求める『ジャネット』。
果たして彼女の望みは叶うのか。


ラストシーンを見せられた瞬間に、背筋がぞっとしてしまった。
九十分の尺をかけて積み上げられた来た『ジャネット』=『ジャスミン』像が
ここで百八十度ひっくり返される。

しかし、よくよく考えれば、その片鱗はあったのだ。
タイトルからして「Blue」な「Jasmine」となっている。
要は我々がそれとは気づかないよう、周到に配慮した監督の作戦勝ち。


主人公の周囲の人達は、皆が皆、
所謂、「良い人」として描かれる。

妹やその元夫、息子達、今の恋人、
飛行機の中で乗り合わせた老婦人
タクシーの運転手に到るまで、
須らく彼女に配慮してくれる。

一方、それに対する彼女は、頗る尊大だ。
田舎モノと馬鹿にし、下品で粗野と見下す。

何時の間にか我々は、『ジャスミン』と視点を共有し、
周りこそが世間からズレているかの様に錯覚する。

また(何時もながらの『ウディ・アレン』らしい)言葉の洪水に
身を委ね、都度笑わされてしまう。

しかし、この時点で、既に監督の術中に嵌っているとは、
多くの人は気付かないだろう。


今の生活に失望する度に、『ジャスミン』は独り言を延々と話しだし
妄想にも耽る。
それに併せて、過去のNYでの生活の一場面が挟み込まれ、
現在の境遇に到った背景が、少しづつ我々にも理解できるようになる。


哀れな境遇の『ジャスミン』が、将来の夢を語り、
新たな恋、そして輝かしい地位を取り戻すのに
小さな嘘を積み重ね、奮闘する姿に
ニヤリとしながらも共感し、味方になることはあっても
嘲る思いは欠片も持たせないよう、
観客に仕向けておきながら・・・・。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。

ここのところ、僅かな毒は含みながらも
甘いロマンスを主題にした映画が多かった『ウディ・アレン』だが、
久々に面目躍如とも言える強烈な一作。

78歳になっても、まだまだ快作をリリースできる力量を
まざまざと見せつけてくれた。