RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

モールス@TOHOシネマズ六本木ヒルズ 2011年8月14日(日)

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席数124の【SCREEN4】は、やはり満員の盛況。
作品の良さもさることながら、
前述の理由の影響も大きいのだろう。

観客は若い男女のカップルに、
妙齢の女性・男性が一人きり、
のパターンが多い。


華奢なカラダと、その気の弱さから
学校で虐めの対象になっている『オーウェン』は
友達もおらず、家のあるタウンハウスのパティオで、
母親に夕餉の声掛けをされるまで
独り時間を潰す毎日。

ある時、隣の部屋に同じ歳頃の美少女
『アビー』が越して来る。
自分と同じ孤独の匂いがする彼女に
魅かれて行く『オーウェン』。

しかし、時を同じくして、
小さな街では猟奇的な殺人事件が頻発するようになった。


邦題の「モールス」は次第に仲良くなった二人が、
壁越しに連絡を取り合う時に使った手段だが、
それを伏線としてラストシーンまで輻輳する手管は
中々のもの。

しかし、原題の
「Let Me In」の方が、ある意味的を得ていて、
おそらく西洋の文脈では、これを見た途端に
「吸血鬼ものだな」と検討が付いてしまうのだろう。
「バンパイヤ」は最初の来訪時に、
住人に許可されない限り、家に足を踏み入れることが出来ない
と言う約束を、きっちりと体現している。


ポーの一族〕等で繰り返し描かれて来た様に、
「バンパイヤ」は人の力を借りないと
生きては行けない。

しかし、不死の彼等にとっては、
人間の生は余りにも短く、
それは寄生虫の様に、
次々と宿主を乗り換えなければいけない性。

一方、人間は、彼等から何を得るのか?


ターミネーター〕が”SFアクション”で売れたものの、
その実は”単純な恋愛映画”であったように、
本作も”スリラー”で宣伝してはいるが(それが正しいとは思わない)、
実態は”悲しいまでに純粋なラブストーリー”である。

しかも、少年の眼には、己の行く末も見えていながら、
それでも自分を賭してしまう「サクリファイス」。

本歌を観ていない自分にとっては、
素晴らしすぎる一作。


エンドロールも、ホワイトバックに
最初はブラックの文字が次第にダークレッドに
染まるスタイリッシュなスタイル。
最後まで、良く造り込まれている。