RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

夢売るふたり@品川プリンスシネマ 2012年9月16日(日)

さほど大きくはないものの、
席数96の【シアター4】は満員の盛況。
「R-15」の故もあるのだろう、
客層は若干高齢に寄ったカップルが多い。


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狭いながらも繁盛していた小料理屋を失火で無くし、
『市澤貫也(阿部サダヲ)』は自暴自棄な生活を送っている。

一方、しっかり者の妻『里子(松たか子)』は、
早速新しいバイト先を決め、店の再建に向けて稼ぎ出す。

物語は店の常連だった『睦島(鈴木砂羽)』に
ひょんな処で『貫也』が出会い、
大金を託されたことで動き出す。

料理店に来る、寂しい独身女性相手の結婚詐欺を
『里子』が思いつき、『貫也』がそれを実行に移す。
それで得た金を、次の店の開店資金にするために。

多くの女性から小金を寸借する内に、
夫婦の関係が微妙に軋みだす。


タイトルこそ『・・・・ふたり』となっているが、
これは、『里子』の映画である。

本作での、『松たか子』は
〔告白〕の時とは異なった怖さが横溢している。

それは、パンをむしゃぶる様に食べるシーンに象徴されるのだが、
観ていて、ぞっとさせられる。

夫が自分以外の女性と懇ろになる心の葛藤を
比較的抑えた演技で表現している。

〔ゆれる〕での、
一人洗濯物を畳む『香川照之』の様な
寡黙な、しかし孤独感を醸す薄気味悪さは無い。
此処での彼女は、そこそこ饒舌で、しかも剛い。


考えてみれば、ここでの『貫也』は、けして悪人としては
描かれていない。
騙した女性達に、一時の夢を与えた存在として、
寧ろ肯定的だし、彼女らが、彼の事を
知っている自慢をするシーンからも
それは窺える。


ファーストとラストのシークエンスで、
こちらをしっかりと見据える『松たか子』の視線は
実はスクリーンのこちら側にいる観客に向けられている。

最初は夫と一緒に、やや怯えた様な、
最後は意志の詰まったしっかりとした。
その大きな眼に、我々に射抜かれそうになるのだ。