RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

柘榴坂の仇討@チネチッタ川崎 2014年9月23日(火)

封切り四日目。
席数407の【CINE11】の入りは五割ほど。

客層は高齢者の夫婦連れが多いのだが、
本編が始まってから入って来て、
席番号が見えない見えない、適当に座っとけ
とか大声で話したり、
身をかがめずにスクリーンの前を横切ったりは困りもの。

日頃映画館に来ていない層も多いのだろうが、
それでも最低限のマナーだもんね。

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世に言う「桜田門外の変」の、その後を描く。
ここでの主人公は襲った側の水戸浪士だったが、
本作の主人公は襲撃された側の彦根藩士。

相手に数倍する駕籠周りの護衛を擁しながら
主君の身を護り切れなかった責を一身に受けさせられた『志村金吾(中井貴一)』は
逃走を続ける五人の浪士の内、
一人の首でも『直弼(中村吉右衛門)』の墓前に手向けないうちは
切腹も許されないという厳しい処置を受ける。

1860年の事件から13年が過ぎ、時代は明治へ。
それでも『金吾』は髷に二本差しで敵を探し江戸市中を徘徊。
その風体は周りからも浮き、異様ささえ帯びている。


桜田門】は今の【有楽町】、
『金吾』が最後に残った敵の一人『佐橋十兵衛(阿部寛)』と邂逅するのが【新橋】、
そして、二人が再び侍として合いまみえた【柘榴坂】は【品川】と、
物語はかなり狭い域内で収斂している。


「敵討ち禁止令」は、まさにその1873年
廃刀令」は、更にその三年後の1876年に公布される。

しかし、史実では、その後も仇討ちは行われているわけだから
此処ではあくまでもドラマチックに盛り上げる為の
道具立て、ということだろう。


この時点では最早「藩」は存在せず、
主人公を縛るものは、実は何もない。

しかし、自分を取り立ててくれた亡き主君への純粋な思いだけで、
憑かれた様に行動する。


自分に命を下した側は、おそらくそれが有った事も忘れてしまい、
今は時代に乗りながら、何の苦労もせず暮らしているかもしれない。

が『金吾』はそんなことに思い至りもせず、
侍としての矜持を保ち続ける。

彼の想いを理解し、寄り添い続ける妻の『セツ(広末涼子)』の態度も含めて、
観終わった後は、何か清々しい気分にさえなる。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆★。


その類のエピソードが盛り込まれているから仕方無いのだが、
昔の侍は立派だった、とか
彼の妻は貞女の鑑だ、とかの
通り一遍のハナシではないだろう。

恩讐を超え解かり合う姿や、
夫婦の細やかな心の通じ合いという普遍的なカタチこそが、
観る側のココロを打つんだから。