RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

終戦のエンペラー@109シネマズ川崎 2013年8月10日(土)

封切り三週目に突入。

席数121の【シアター5】は満席。
客層が高齢に振れているのは
題材からして当然だろう。


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1945年8月30日。
サングラスを掛け、コーンパイプを咥え、
日本人にとっては写真でお馴染みの姿で
厚木基地に降り立った『マッカーサートミー・リー・ジョーンズ)』は
知日家の随員『ボナー・フェラーズ(マシュー・フォックス)』准将に
本戦争の責任の所在を十日間以内に明らかにすることを命じる。
更に、それは、時の天皇とて捜査の対象外でないことをつけ加える。

関係者の一斉逮捕を端緒に動き出した『フェラーズ』だが、
彼にはもう一つ、
学生時代に交際していた日本人女性『島田あや(初音映莉子)』を見つけ出す
目的があった。


実際に天皇戦争犯罪者として裁かれた事実は無いので、
どの様な経緯が其処には有ったのか、と
これはフィクションではあるものの、
『あや』の消息は掴めるのか
という二つのポイントを軸に物語は進行する。


しかし本作、頗る良く出来ている。

玉音盤を奪取するため、
相当の攻防があったのは知られた事実だが、ここでは
そう言ったドラマチックな出来事を隅に追いやり、
歴史の端で起こった、しかし実際には、
それがその後の日本を大きく動かした些細なエピソードをこそ
大事に掬い上げている。


ここで描かれる、日米の文化の相克は極めて面白い。
何事も白黒をはっきりとはつけず、
互いを察することで物事が進行する日本人と
その真逆の米国人。

周囲の人々は、今までの自分達のやり方がそのまま通じ、
それで天皇の戦争責任は回避されると勝手に思い込んでいる。

また皇居を守護する軍隊にしても、
天皇の権威や畏敬が、そのまま米国人に通じると
信じている。


この映画での言動が、そのまま真実であるとするなら、
マッカーサー』との会見に臨んだ『昭和天皇片岡孝太郎)』こそが唯一
事態を正確に把握していたことになるのだが・・・・。

ただ、あの、(これも有名な)一葉の写真-
尊大そうに見え、何か困惑した表情の『マッカーサー』、
媚びず諂わず、自然体に加え薄っすらと笑みまで感じさせる『昭和天皇』-の
背景を、かなり雄弁に語っている様に見えるが、どうだろうか。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆★。

外国制作であるにも係わらず、
あまりにも日本人の心理が上手く描けているのは
原案・原作・制作に、夫々日本人が参加しているからこそ、だろう。

そして、『フェラーズ』のような知日家を排斥せず、
上手に利用したことが、
(勿論、物量面での差は歴然とあるのだが)歴史の帰趨を決定付けたのだと、
この時期に彼我の差を改めて思う。