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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

リンカーン@チネチッタ川崎 2013年5月1日(水)

席数191の【CINE 10】は
九割方の入りで盛況。

やや高齢の男女がカップルで来ているケースが多く、
アカデミー賞」に加え、
歴史好きの日本人に訴求するタイトルになってはいるが、
気持ちを上手く掴まえる作品になっていたかな?

こういった、話題作にありがちな、
日頃映画館には来ないであろう人達も多く見受けられたが、
彼等の感想はどうだっただろうか。

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丁度この時期、
スター・チャンネル』で放映されていた
〔戦火の馬〕を観た。

スピルバーグ』の益々冴える職人技に
唸らされっぱなしの二時間半だったのだが、
本作も同じ長尺で
やはり歴史に題を取っている。


我々にとっての『リンカーン』は『ポプラ社』の
〔偉人伝〕で読んだ程度の雑駁な知識しか
多分無い。

要は、苦労人で、艱難辛苦の末、合衆国大統領となり
奴隷解放を実現し、最後は暗殺される。


本作での彼は、かなり人間臭く、多分
この姿が、より実際に近いのだろう。

次男を亡くした経緯で事あるごとに妻に責められ、
加えて彼女は軽い鬱状態
長男は自分も軍隊に入り、南北戦争を戦うと言い出し、
家庭人としての苦悩も随所で語られる。


物語りの核は、奴隷解放の為の「修正第13条」を
下院で通すための経緯(なので映画中で主に描かれるのは
一ヶ月未満に過ぎない)。
その為には、
のらりくらりとやり過ごす、
強要や、果ては官位を鼻先に付きつけての買収まで
ありとあらゆる手立てを使い、
とても聖人君子と言った風ではない。

ただ、その一連の過程の描写は
時にユーモア、時に繰り返しのギャグを使い、
重厚なドラマの中の一服の清涼剤になっている。


(あの有名な)「ゲティスバーグ演説」から書き起こし、
暗殺までの数か月間、
夢の実現のため懊悩し、時に荒ぶる偉人の生涯を
コンパクトに纏めて見せて呉れる。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。

冒頭、監督本人による日本に向けてのメッセージと
事の抄訳の説明はあるが、
人間関係や経緯自体に対して浅薄な知識しか無い我々には、
大まかな流れを追うのが精いっぱい。

主演俳優達の熱演はその通りだけど、全体として観た時に、
彼の地での最高評価とのギャップを感じてしまう。