RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

草原の椅子@品川プリンスシネマ 2013年3月16日(土)

封切りから一カ月近く経っているのに、
(この小屋では)一日一回限りと言えども
まだ上映が継続している。

ただ、席数190の【シネマ2】の入りは
二十人程度と、はかばかしくは無い。

客層は高齢者が目立っている。

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妻の浮気が原因で離婚し、今は女子大生の娘と二人暮らし、
都心のカメラメーカーに勤める『遠間(佐藤浩市)』

『遠間』の取引先のカメラチェーン社長の
『富樫(西村雅彦 )』

そしてやはり『遠間』が最近出入りするようになった
焼き物店のオーナ『篠原(吉瀬美智子 )』

実の親にネグレクトされているところを『遠間』に助けられ、
今は彼と同居している、まだ四歳の『圭輔』

この四人がパキスタンの更に辺境の地フンザを訪れているところから
物語は始まる。


この四人が、何故、彼の地に居るのかが
作品のキモで、
本編140分の内、相応の時間を使い、
その間の事情を描き出す。


もう五十になる『遠間』は老眼も進み
肉体的にも衰えが出始めている。
労働環境も、このご時世を反映し、
次第にキツイものになって行く。
また、彼とて、私生活に於いては、過去
決してキレイなカラダであったわけでは無い。

『富樫』は『富樫』で、(口調からも判る様に)
関西から東京への進出をした判断が正かったのかを迷い、
真っ当な商売をして行くには難しい時代だと感じ、
自身の浮気の後始末にも悩み、
更には周囲に信頼できる人間が居ないため
無理やり『遠間』に親友になってくれる様、拝み倒す。

悠々とした生活を送っている様に見える『篠原』でさえ、
昔の暗い影を引き摺っており、
それが次第に明らかになる。


周囲の人達む含め、全ての登場人物が
人生の岐路に立ち苦しんでいる。
しかし、本作は、そのすべてを肯定し、
あくまでも優しく包み込む。

そのままの自分で良いのだと、
自分が正しいと思ったことをすれば良いのだと。


その意味で、これは寓話に満ちた
現代の御伽噺であり、観終わった後は、
ココロがふうわりと軽くなる。

観客の我々をも、軟らかに肯定してくれるのだから。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。

昨今、進境著しい『小池栄子』は勿論だけど、
〔白夜〕〔死刑台のエレベーター〕では
とってもダメダメだった『吉瀬美智子』が
此処ではかなり良い。
一皮剥けたとゆ~か。
今後が楽しみになってきた。


それにしても
監督の『成島出』は上手いな。
作品によって、その発露する場所は異なるが、
今回は些細な表現による
出演者達の心情描写が絶妙だ。