RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

ツナグ@TOHOシネマズ川崎 2012年10月14日(日)

席数147の【SCREEN2】は八割程度の入り。
客層は、カップルが圧倒的に多いのだが、
安心して観られるということからか親子連れ、
それも『シンケンジャー』の流れからか若いお母さんが、
オマケに『梅ちゃん』の勢いそのままに、
高齢の女性集団も散見し、おいおい凄い人気だな
主演の『松坂桃李』クンは。

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死者と生者がお互いに望めば
一度だけ、しかも一晩限り会うことができる。
その仲立ちをするのが「ツナグ」であり、
先々代を『樹木希林』が、それを
引き継ぐ新たな「ツナグ」を『松坂桃李』が演じている。


設定については、
「所謂、都市伝説でしょ」と言った科白が、劇中にも出てくるが、
実際には我々は、これに類したことを
見聞きしているはずで、
例えば、「イタコの口寄せ」であり、
ちょっと田舎へ行けば、霊を降ろすシャーマンの様な存在は
今でもそこそこ居るはずだ。

実際に自分も四十年以上前に、それを体験をしており、
シャーマンの女性が具合の悪い老婆(自分の祖母)
のカラダを撫でていると、
次第に生霊として取り付いている人間の如く話し始める。

その時に、場が凍りついたのは、
口調といい声色といい、そして笑う時の癖といい、
ある親戚の男性とそっくりだったのだから
(勿論、そのシャーマンは、我々が、何処の誰かなど認知していない)。

小学校低学年の身には、今でも折にふれて記憶が蘇る戦慄の時間だった。




原作は『辻村深月』の連作短編。

その中から幾つかの挿話を取り出し
一本に纏めている。
それらは絡み合いながら、同時並行し
我々の前に提示される。
夫々のエピソードには当然の様に「泣かせ所」が用意されており、
場内は啜り泣きの渦に巻き込まれるのだが、
自分がその時感じていたのは、
実はエゴイスッステックな人間の側面。

死者と対峙することで、
生きている時には言えなかったことが顕になる
(逆のケースもあるのだが・・・・)。
生前に伝えられれば、どれほど良かっただろう。

特に凝った撮り方や、カメラアングルに特徴があるわけではない、
造り自体は極めてフツー。

しかし、原作の持つ要素が十分に脚本に転化され、
加えて浮世離れした雰囲気を漂わせる『桃李』くんのキャスティングもぴたりと嵌り、
更には主人公の人間としての成長も描かれる、
最上の作品として昇華した。

これは、今秋のおススメの一本。