RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

風立ちぬ@109シネマズ川崎 2013年8月4日(日)

席数89の【シアター8】は満席。
封切り三週目、
加えて席数345の【シアター6】も並行運用されていての
状況だから、これは凄い。

新聞でも「大ヒット上映中」の告知が踊っているしな。

事前情報では、子供の姿は殆ど見られないとのことだったが、
一割程度の来場者はお子様。

しかも、未就学児童が多く、
これは親御さんは、何を考えてのことだろうか。

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監督への事前インタビュー等をキチンと確認していれば、
この人が極端な戦争嫌いの反面、
戦闘機を始めとするメカニックへの偏愛があり、
アンビバレンツな要素を併せ持つことが判る。

で、本作。
一番最初に見た予告編では、
そのタイトルと共に『堀辰雄』の名前と
絵筆を振るう若い女性の姿が前面に出れば、
これは、あの原作を、ただ映画化しただけだとおもうじゃないか。

この時点での、鑑賞意欲はゼロ。


次いでは『堀越二郎』の名前と『零戦』が持ち出され、
また違った作品の側面を我々は見ることになる。

ここで、実話とオハナシを融合した二側面を持つ作品であることが
明らかになる。

一気に観る気満々になった訳だが、
本編自体も現実と夢が境目無く展開され、
更には時代がポンポンと跳躍する。

『宮崎』作品にしては、頗る繋ぎが良くない。

加えて、先に挙げた戦争嫌いの為、
リアルな戦闘シーンを描くことができない。

今まではファンタジーの中であったから許容されたいた
豪快な空での描写が、ここでは見事に封印され、
それは夢の中であったり、テストシーンであったりと
謂わば足枷を嵌められているに等しい。


主人公の発言も戦争を忌避する内容であるにも関わらず、
声優に全くの素人である『庵野』監督を起用したために
妙に心の籠っていない、薄っぺらな印象を受けてしまう。

とは言うものの、主人公の造形が
浮世離れしており、最初からそれを目論んだものかもしれない。


当時の国カタチや
人々の貧しさに対しての意見は口にするものの、
主人公自身が関東近辺の素封家の生まれ、
ましてや周囲の人々も
帝大を出て比較的裕福な暮らしをしているわけで、
科白にも説得力が無い。

そう、本作は、監督自身が内包する
抜き差しならない二面性が、
画面のあらゆる箇所に顔を出す。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。

女の子が掃除をすることで自分の居場所を確保するのが
直近の宮崎アニメの大きな骨格で、路線が判り易い大きな特徴がある。

翻って本作。
監督の複雑の感情を作品自体に持ち込んでしまったため、
極めて消化の悪い内容に堕してしまった。

それでも、世に在るダメダメな作品と比べれば
一頭抜けているんだけど。