RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

偽りの人生@TOHOシネマズシャンテ 2013年7月14日(日)

席数224の【CHANTER-1】は満員。

封切り二日目、
千円で鑑賞可能、
等の要件が重なってのことと思うが、それにしても
凄まじい入りだ。

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ブエノスアイレス】で勤務医として働く『アグスティン(ヴィゴ・モーテンセン)』のもとを、
長く疎遠であった一卵性双生児の兄『ペドロ(ヴィゴ・モーテンセン=二役)』が訪れ
自分は癌の為、余命幾許も無く、殺すことで、
この苦しみから救って欲しいと懇願する。

衝動的に兄を殺害してしまった弟は、『ペドロ』に成り済まし、
故郷へと戻って行く。

都会生活での漠然とした不安や閉塞感から逃れ、
そこで新しい暮しを始めるつもりだった『アグスティン』だが、
兄が誘拐ビジネスに手を染めていたことから、
心ならずも犯罪に巻き込まれて行く。


違った形で人生をやり直したいと、ふと思うのは
人間だれしもあることだろう。

本作では、
・双子の存在
・旧知の田舎
と言った諸条件を示して、入れ替わりがすんなりと行われる仕掛けを整えている。

共働きの『アグスティン』は、アッパークラスの生活で
何も不自由が無いよう傍目には見えても、
養子をとりたいと願う妻との感情の乖離は大きく、
それが行動の一つの理由であることは
さりげないシーンで示されるのだが、
あまり説得力があるわけでは無い。


では、故郷での暮らしが「新しいもの」かと言うと、
けしてそうではなく、
過去の知識はその集団に溶け込むのに有利に働く一方で、
因習や古い記憶が、其処での生き辛さも助長する。

要は、どこに居ても、必ずしもユートピアではなく、
人生は「仮初」であることが提示されるのだが、
他人の為に生きることを決意した『アグスティン』の判断は
ある意味清々しいし
ホントの人生って何さと、大上段に振りかぶるわけでは無く、
ノワールな描写の中で仄めかされるのは
ある意味、混沌から掬い上げられた様な
鈍い輝きを放ってる。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。

ラストの小舟が河を遡上して行くシーンは、
全くの救済が感じられ、後味は悪くない。