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人間国宝 大坂弘道展@練馬区立美術館 2013年1月13日(日)

~2月11日(月)まで開催されている
無料の展覧会

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サブタイトルには
正倉院から甦った珠玉の木工芸」なる、また
ポスターには
「超絶技巧をこえてゆく」なる、惹句が冠されている。


入り口付近に掲示されている「主催者挨拶」や
「作者略歴」は、普段あまり見ない方なのだが、
今回に限っては、じっくりと見入ってしまった。
その方が、作品を理解する一層の助けになる。
会場の奥の方に展示されている「制作工程見本」についても同様。


作品毎に
「材料」「技法」「文様」「形・用途」
「(あれば)銘」そして制作時の作者年齢が記されているのだが、
それがいきなり34歳から始まることにまずは驚く。
理由は「略歴」を見れば明らかなのだが、
元々は中学校の教師であったのが
次第に指物や木工に足を踏み入れて行く過程が
作品を以って雄弁に語られる。

初期の作品は素材そのものの、特に木目の面白さを全面に出した
シンプルな作品が並べられており、時として見られる、
その円みを帯びた軟らかい表現は、
一斤の食パンを連想させたりする。

正倉院御物』の模造を委託された四十代後半から
作風に変化が見られ、
錫を使った象嵌螺鈿象牙、拭漆と
素材や技法も古来からのそれを使い、
より細かい文様も取り込まれる。

木の軟らかなカーブに、美しく流れる木目、
そして超絶的な技巧の三位が一体となり
独特の世界を醸し出している。


また、作品自体が市場に出回らず、
多くは買い上げ品、または美術館に寄贈、
作家蔵と言うカタチに加え、
直近十年ほどは、制作しても表には出していないとのことで、
計六十点弱が一気に観られる最後の機会かもしれないし、
これほどの規模の展示は、過去に無かったのではないか。

その意味で、交通費を掛けて行くのに
十分な価値がある。


同時に開催されている「区内の小中学生の作品展」から人が流れて来る
うらみはあるが、
それでも、作品自体が持つ凛とした佇まいは
少しも損なわれることが無い。


作者はもう七十代後半にさしかかろうとしているが、
その細緻な手練は、衰えるどころか、益々磨きが掛かって見える。