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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

もうひとりのシェイクスピア@TOHOシネマズシャンテ 2013年1月14日(日)

席数190の【CHANTER-3】は八割程度の入り。
客層は、中高年のカップルが多いが、
この劇場ならでは、の感じもする。


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原題は〔Anonymous〕で「匿名」や「作者不明」の意。

元々『シェイクスピア』は別人だった、とか
座付き作家集団による造形だった、とした説は古くからあるのだが、
此処では『オックスフォード伯エドワード』こそが
真の『シェイクスピア』であり、
当時は「演劇」は下賤の更に偶像崇拝的なものとされていたため、
貴族の(しかし、劇作の才能に溢れている)彼は
自分の名前で作品を公表することができず、
仕方なしに、影武者を仕立てたとの立場をとる。


本編は往時の演劇を模した口上から始まる。

しかし、『シェイクスピア』=『オックスフォード伯』は
冒頭であっさりと、観客の前に提示されてしまう。

あらあらと思っていたら、考える間もなく
次々と眼前に現れる歴史の渦に
我々は巻き込まれてしまう。

どうやら本作の眼目は、
1500年代後半から1600年代前半にかけての
エリザベス1世』統治時代「チューダー朝」後期の
王位継承や権力の争い、そして女王の愛憎を
描くことに目的がある様で、
シェイクスピア』はあくまでも狂言廻しにしか過ぎない。

才気に恵まれ、作家としては超一流ながら、
一方、策謀についての興味は薄い『オックスフォード伯』の
「悲劇」の物語と読むことが出来そうだ。


人物の造形は重厚で人間関係は複雑、
更に、画面は幾つかの時代を自在に往還するので、
西洋人の顔や名前を覚えることが苦手な、
加えて英国の歴史に疎い日本人は、
流れを掴むのにかなり難渋する。

にしても、
エリザベス1世』を演じた『ヴァネッサ・レッドグレイヴ』、
シェイクスピア』を演じた『レイフ・スポール』、
何れも残されている肖像画の面立ちと酷似していることに驚嘆する。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。