しかし、耳に入って来るのは
「泣けるんだってよ、これ」
「じゃあ、ハンカチ用意しとかないとね」
みたいな会話で、ふ~ん、
そ~ゆ~ハナシになってるんだ。
「泣けるんだってよ、これ」
「じゃあ、ハンカチ用意しとかないとね」
みたいな会話で、ふ~ん、
そ~ゆ~ハナシになってるんだ。
人は誰でも「秘密」や「他人に言えないこと」
の二つや三つは持っている。
それが幼い頃の記憶であれば
猶更、喉に刺さった棘の様に、
ふとした瞬間に、ぴりりと
その痛みを感じてしまうだろう。
の二つや三つは持っている。
それが幼い頃の記憶であれば
猶更、喉に刺さった棘の様に、
ふとした瞬間に、ぴりりと
その痛みを感じてしまうだろう。
本作は、そうした切ない悲しみに満ちている。
彼女は持ち前の優しさと熱心さで
子供達の心を掴み、
更に彼等の歌の才能を掬い上げ
合唱を指導することで地域の信頼も勝ち得て行く。
子供達の心を掴み、
更に彼等の歌の才能を掬い上げ
合唱を指導することで地域の信頼も勝ち得て行く。
しかし予期せぬ不幸な出来事により
彼女は石もて追われる様に
島を去ることになる。
彼女は石もて追われる様に
島を去ることになる。
それから二十年後。
図書館の司書を定年退職した
『はる』のもとを
殺人の容疑で指名手配されている
嘗ての教え子の一人の消息を確認するために
刑事が訪ねて来る。
図書館の司書を定年退職した
『はる』のもとを
殺人の容疑で指名手配されている
嘗ての教え子の一人の消息を確認するために
刑事が訪ねて来る。
『はる』は
彼を探す為に、手元に有った住所を頼りに
六人の教え子達を、一人一人訪ねて廻る。
その過程で、小さな秘め事が一つずつ語られ、
過去の事件の全容が次第に明らかになる。
彼を探す為に、手元に有った住所を頼りに
六人の教え子達を、一人一人訪ねて廻る。
その過程で、小さな秘め事が一つずつ語られ、
過去の事件の全容が次第に明らかになる。
教え子達を順に訪ねて行くのは
〔舞踏会の手帳〕と同様の手法。
〔舞踏会の手帳〕と同様の手法。
ここで、彼等・彼女等の現在と、
そして嘗ての分校での出来事が
カットバックで語られる。
そして嘗ての分校での出来事が
カットバックで語られる。
エピソードが積み重なることで
悲しい事件の骨格がおぼろげな姿を現すのだが、
それは際立った凄さも衝撃も兼ね備えてはいない。
悲しい事件の骨格がおぼろげな姿を現すのだが、
それは際立った凄さも衝撃も兼ね備えてはいない。
結果として不幸な事件に帰結してしまうのだが、
もしかすると、自分達も経験したかもしれない
些細な行き違いの連鎖である。
もしかすると、自分達も経験したかもしれない
些細な行き違いの連鎖である。
最初は行き当たりばったりに見えていた
彼女の行動が、実は意図的なものだと見えて来た時、
意志を持って過去の清算をし、
教え子達を過去の呪縛から解き放とうとする
『はる』の強い意志が垣間見え、
我々は万感の思いに胸が塞がれそうになる。
彼女の行動が、実は意図的なものだと見えて来た時、
意志を持って過去の清算をし、
教え子達を過去の呪縛から解き放とうとする
『はる』の強い意志が垣間見え、
我々は万感の思いに胸が塞がれそうになる。