RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

北のカナリアたち@109シネマズ川崎 2012年11月11日(日)

こちらも公開二週目。
席数75の【シアター8】は
八割方埋まっており、
客層は高齢の夫婦連れが圧倒的で、
主演の『吉永小百合』見たさ故なのだろうか。

しかし、耳に入って来るのは
「泣けるんだってよ、これ」
「じゃあ、ハンカチ用意しとかないとね」
みたいな会話で、ふ~ん、
そ~ゆ~ハナシになってるんだ。

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人は誰でも「秘密」や「他人に言えないこと」
の二つや三つは持っている。
それが幼い頃の記憶であれば
猶更、喉に刺さった棘の様に、
ふとした瞬間に、ぴりりと
その痛みを感じてしまうだろう。

本作は、そうした切ない悲しみに満ちている。


【北海道】の果ての岬の分校に
中年の女教師『川島はる(吉永小百合)』が赴任して来る。

彼女は持ち前の優しさと熱心さで
子供達の心を掴み、
更に彼等の歌の才能を掬い上げ
合唱を指導することで地域の信頼も勝ち得て行く。

しかし予期せぬ不幸な出来事により
彼女は石もて追われる様に
島を去ることになる。

それから二十年後。
図書館の司書を定年退職した
『はる』のもとを
殺人の容疑で指名手配されている
嘗ての教え子の一人の消息を確認するために
刑事が訪ねて来る。

『はる』は
彼を探す為に、手元に有った住所を頼りに
六人の教え子達を、一人一人訪ねて廻る。
その過程で、小さな秘め事が一つずつ語られ、
過去の事件の全容が次第に明らかになる。


いやぁ、『湊かなえ』原作と言うことで
一筋縄ではいかないと思っていたが、
単純そうに見えて、実は相当に複雑な構成になっている。


教え子達を順に訪ねて行くのは
〔舞踏会の手帳〕と同様の手法。

ここで、彼等・彼女等の現在と、
そして嘗ての分校での出来事が
カットバックで語られる。

エピソードが積み重なることで
悲しい事件の骨格がおぼろげな姿を現すのだが、
それは際立った凄さも衝撃も兼ね備えてはいない。

結果として不幸な事件に帰結してしまうのだが、
もしかすると、自分達も経験したかもしれない
些細な行き違いの連鎖である。


最初は行き当たりばったりに見えていた
彼女の行動が、実は意図的なものだと見えて来た時、
意志を持って過去の清算をし、
教え子達を過去の呪縛から解き放とうとする
『はる』の強い意志が垣間見え、
我々は万感の思いに胸が塞がれそうになる。


脚本、出演者の何れを取っても、
非の打ちどころの無い秀作なのだが、
唯一『吉永小百合』に、過去を演じさせたのは
ムリがある。

顔のアップはメイクや撮影技法で何とかなるけれど、
身のこなしは、到底四十歳のそれではない。
此処はWキャストが賢明だっただろう。