RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

アルゴ@109シネマズ川崎 2012年11月10日(土)

席数103と、小さいながらも【シアター5】は
九割方の入り。
しかし、「109シネマズの日」だと言うのに
エグゼクティブシートが埋まってなかったりもする。

客層は中年のカップル多し。

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事実を基にした物語、と
最近流行の一文が提示される。

舞台は1979年。
市民と宗教者達が『パーレビ国王』から主権を奪還した
革命只中のイラン。

その際にアメリカ大使館が占拠され
大使館員が人質となり
救出作戦の失敗と最終的な彼らの解放は
記憶の片隅に有るが、
本作で描かれるカナダ大使館に避難した六人の
件については、とんと記憶に無い。

それもその筈、事件から18年後の情報解禁で、
初めてその全容が明らかになったのだから。


CIAの工作員『トニー・メンデス(ベン・アフレック)』は
架空のSF映画〔アルゴ〕の制作をでっち上げ、
そのロケハンと称して彼の地に乗り込み、
スタッフに偽装させた外交官達を脱出させる計画を立てる。

最終的に、彼等の解放は成功するのか?


これはかなり良くできた一作。


先ず、本作そのものが
ギミックとなっている。

実話と言う補強が無ければ、
こんな荒唐無稽な脚本は
お蔵入りになったことだろう。

常人なら思いも付かない様な、
余りにもお馬鹿な脱出作戦なのだから。

それが実際に有った、との
裏付けがある事で、
我々は一層のサスペンスを感じることになる。


ストーリーは、脱出が成功するのか
の一点に集約され、単純化されている。しかし、
次々と発生する障害の数が半端ではない。

それらは、一つ一つを取れば
古典的と言って良いほどありふれた内容ではあるけれど、
これだけ矢継ぎ早に繰り出されると、
我々は息つく間もないほどの緊張感を強いられる。

特に計画が動き出した後半は、
気の休まるシーンが無く
脚本の『クリス・テリオ』の腕の見せ所である。


枝葉の造り込みも冴えている。

緊急時にも拘わらず、
繰り出されるジョークは如何にも西洋人らしい。

一方で、些末なことで議論が繰り返される、
米国社会のもつ弊害も、ちゃんと盛り込まれている。

加えて、こういった作品にありがちな、
一方的なアメリカ礼賛ではなく、
イランに対して西洋諸国は何をして来たのかを
キチンと語る醒めた眼も持っている。

監督の労と共に、
抑えた演技の『ベン・アフレック』が矢張り秀逸。


劇中で挟み込まれるフィルムには
往時の米国とイランの様子が焼き付けれれているのだが、
昨今の中国内の反日暴動と相似で、
何とも複雑な気分になってしまった。