RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

必死剣 鳥刺し@109シネマズ川崎 2010年7月10日(土)

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今日が初日と言うこともあろうが、席数130の
【シアター2】は、ほぼ満席。
客層は高齢の男性が多いかな。
この層が、(良質な)時代劇に飢えている証左の気もするのだが。


海坂藩の近習頭取『兼見三左エ門(豊川悦司)』は、観能の際に
藩主の側室『連子』を「ご免」の一言の元、
いきなり刺殺してしまう。

しかし、案に相違して、その処分は、閉門一年という寛大なものだった。
その一年間の四季の移ろいの風景と共に、蟄居中の生活、
側室を殺めるに至った経緯が併行して淡々と語られる。

閉門が解けた後、再び出仕した『三左エ門』は以前にも増して重用される。
が、それには何らかの思惑が絡んでるようだった。


オープニングから、エンディングまで、常にカメラは静謐である。
一切の感情を押し殺しているような冷徹な視線。
冒頭の側室刺殺シーンから、最後の殺陣まで一貫している。
それがこの映画に深みを与えている。

ラストの殺陣のシーンが喧伝されているようだが、
この映画の白眉は、寧ろ其処に至る過程の描写にある。
亡妻の姪『里尾(池脇千鶴)』との
仄かな心の通い合いも、観ている方が面映ゆくなるようなじれったさ。
加えて、所作の美しさ、細部の描きこみ(主君の色の白さと、
藩内を回っている「別家」の色の黒さの対比の妙)。
カットバックと、色の調整を縦横に駆使し、
優れて良質な作品となった。


あ、勿論、殺陣の場面は、透徹したリアリズムに、
思わず手に汗握るからね。