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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

時をかける少女@チネチッタ川崎 2010年4月10日(土)

「あなたは誰?」と『芳山』クンが授業中に振り向く予告編を
今でも鮮明に記憶している。
タイム・トラベラー〕。
1972年のNHK〔少年ドラマシリーズ〕の第一作。
算盤教室を早々に退出し、自転車を飛ばして
大急ぎ帰り、テレビにかぶりついたものだ。

『大林信彦』監督の〔時をかける少女〕。
原田知世』と『尾美としのり』、主演の二人がフレッシュで、
加えて珍しく最後まで破綻しない大林演出のお蔭で、
かなり観られる作品に仕上がった。

2006年のアニメ版。
喜怒哀楽の激しい主人公がよく走る映画。
伯母が『芳山和子』であることを指し示すシーンはあるが、
定かではない。
なかなかの佳作。

そして、本作は、上記全ての作品の延長線上にある。

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朝イチ上映のせいだろうか。
キャパ138席の【CINE 3】は「ポイントカード提示割引」日だというのに、
二割程度の入り。

『芳山和子(安田成美)』の娘『あかり(仲里依紗)』は母と二人暮らしの高三。
今春の入試で母親が勤める薬学大に”ミラクル”合格を果たす。
一方、母親は、蘇えった過去の記憶にある約束を果たすため、
タイムトラベル用の薬の開発に励む。

そんな折、母親が事故に遭い、意識不明になってしまう。
一瞬目を覚ました彼女は、娘にその責務を託す。
薬を飲んだ『あかり』だが、行き先の年と月を間違え、
時空を越えてしまう。
本来なら1972年4月のはずなのに、
1974年2月に跳んだ『あかり』は『ケン・ソゴル』と
出会うことができるのか。


仲里依紗』が良い。
現代っ子らしく、くるくるとよく変わる表情を体現し見事。
何時の間に、こんなに演技が良くなったんだろう。
そして、兎に角良く走る。
彼女が走ることで、この映画は成立している。

幾つかのエピソードを輻輳させながら物語りは進むのだが、
傍観者である我々は、新しいカードが切られる度にも、
実は結末を知りながら観ている。
判っていながらも、次の展開にドキドキしてしまう。
その脚本の練りこみが見事。
過去の作品から幾つかを掬い上げ、
水平思考的な展開へと処理している。

カメラも良い。
走る『仲里依紗』の動と、静止シーンのアングルも見事で、
魅せ方を弁えている。

ジュブナイルをベースにした、大人の鑑賞にも耐え得る傑作。