RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

サラの鍵@チネチッタ川崎 2011年12月23日(金)

154席の【CINE9】は四割程度の入りで
やや空席が目立つ。
観客は比較的高齢のカップルが多いか。

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パリに住む十歳の少女『サラ』と
『ミシェル』は仲の良い姉弟
しかし、時代は1942年。
ナチスによるユダヤ人迫害の嵐が吹き荒れ、
ある日、秘密警察が、家族を連行するために乱入する。
彼女は弟を納戸に入れ、鍵を掛ける。
「必ず迎えに来るから」と言い残して。
やがて収容所に連行された『サラ』は
弟との約束を果たす為、脱走を試みる。

時は移って現代。
ジャーナリストの『ジュリア』は「ヴェルディヴ事件」を調べるうちに
嘗て祖父母が購入し、今は自分たちがリフォームをして住もうとしている
アパルトマンが、ユダヤ人から接収されたものであることを知る。

ここで、過去と現在が交錯する。


物語は、戦時中と今を往還しながら語られる。
急な画面の転換も、本作では全く気にならず、
すぐさまその時代だと認識できる。
これは語り口の妙。

また、時として
俯瞰しての長距離移動といった
トリッキーさを見せるカメラワークも
都度の状況を見事に掬い取り効果的。

『ミシェル』や『サラ』のその後。
『ジュリア』は真相に辿り着けるのか。
また、『ジュリア』の家族との関係はどうなるのか。
幾多の「謎」を複次的に描きながら進行する物語に、
胸をドキドキさせながら魅入ってしまう。


声高に叫ばずとも、
静かに描かれる中で、
戦争と、それに伴う人間の狂気や残酷さ、
またたとえ生き残ったとしても
その後も記憶に苦しめられる人々を
切ない想いで知ることになる。

また、それと共に、作中で示される
数多の善意にも、救済を見せる本作は
本年屈指の秀作である。