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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

花嫁人形:佐々木丸美~読了

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1979年『講談社』刊。
1987年、同文庫刊。
そして、今年の3月、『創元社』から文庫が刊行された。

作者の『佐々木丸美』は1949年の生まれだが、4年前に他界している。
此処に来て再評価されている作家、ということのようだが、さて・・・・。


『本岡』一家は地域の有力企業の社長を務める父のもと、
何不自由ない生活を送っていた。
ただ、一人末娘の『昭菜』を除いては。

『昭菜』は幼い頃、『本岡』家に引き取られたのだが、
その間の事情は詳らかにされることは無い。
が、それがために彼女は、家の中では、居るのに
居ないような存在として扱われ、教育を受けることはおろか、
家の外に出たことも無い。

唯一、叔父の『壮嗣』だけはそんな彼女に優しくするが、
回りに人が居ない場合に限られており、そうでない時の態度は
やはり素っ気無い。
全ては、『昭菜』の出自が関係しているようなのだが・・・・。


まず、時代背景や言葉使い、または並べられている単語も含めて、前時代的。
ま、三十年も前の作品だからなぁ。

その点は置くとして、
不満がかなり残ってしまうのは、
人物の背景が語られることが殆んど無いため。

地方で敵対する二つの地元企業。
その覇権を目論み暗躍する男達。
一族内の権力争いも絡み、ドロドロとしている。

「恐ろしい男なのだ」って言われても、「・・・・」だし、
「その気になればいつでも実権を握ることが出来る」って、
不可能だし。
物語の核となるそれらの背景が曖昧模糊とし、
造形が細に入っていないため、
感情移入できないのだ。

一方で、家庭内の女性達の描写は詳細を極める。
企業間抗争の側面は取って付けたようだ。
ただ、理由も無く(これは本人にとって、勿論他の人には理由がある)無視され続ける、
主人公の、ある種片肺なシンデレラストリー。