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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

天才スピヴェット@チネチッタ川崎 2014年11月23日(日

封切り二週目。
席数244の【CINE7】の入りは八割程度と盛況。


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制作サイドは3Dでの鑑賞を薦めている様で、
成る程、そう思って観れば、らしい造りが散見される。

しかし2Dであっても、作品自体の価値には
全くの揺るぎはない。


それにしてもけったいな構造だ。
フランス人の監督、制作もフランスとカナダの合作、
原題もフランス語、なのに舞台は
開拓時代の面影を色濃く残すアメリカはモンタナ州
そして会話も全ては英語なんだから。

そう思って観れば、一つ一つの仕掛けに、
作者なりの意図はある様だ。
年端もいかない子供に平気でライフルを持たせたり、
「ミス・アメリカ」だとか「ミスUSA」だとか、
やはり子供の頃から品評するミスコンを開催したり、
子供であっても商業的に価値のあるものは徹底的に利用するとかは、
傍から見れば、大国の理解不能な病理であり、
しかし、本人達はそれが当然と思っている。

映画はそういった事柄に対して、
ちくりちくりと小さな針を刺して行く。
全体の流れの中では、あははと笑って過ごしてしまうエピソードだが
見ようによってはかなりエスプリが効いている。


父に似て根っからのカウボーイ気質、
誰からも愛されていた『レイトン』が銃の暴発で突然亡くなり、
その時から家族の時間は停まってしまう。
双子の兄『スピヴェット』は自分こそが死ねば良かったのにと
自らを責めるのだが、彼は母親に似て学者肌、
そして、僅か十歳にして俗に言う早熟の天才。
独自の理論が評価され、「スミソニアン学術協会」から
依頼された受賞のスピーチの為、大陸を横断する鉄道に乗る。


そう本作は家族が再び寛解するまでを描いた
ロードムービーでもある。

奇しくも主人公が辿る道は、
開拓者達が西を目指したのと逆の方向。

旅の中途で、我々は懐かしいアメリカのストーリーを
再び目撃することになる
(勿論、カウボーイ然とした父親からしてそうだが、
「ホーボー」とか「ホットドッグ」とか)。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。


一通りの語りが終了し、
観客の側には一つの単語が浮かんで来るだろう、
それは「ホーム・スイート・ホーム」。

いみじくも『D・W・グリフィス』の作品タイトルでもある。