RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

小野寺の弟 小野寺の姉@TOHOシネマズ 錦糸町 2014年11月1日(土)

封切り二週目に突入。

席数113の【SCREEN8】は九割方埋まっている。
客層は老若男女、幅広い。

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イマドキ、こんなに仲の良い、
始終相手を想い遣っている姉弟って、ホントに存在するんだろうか。
少なくとも、弟の側は姉に対して何の不満も持っていないことが
冒頭のモノローグで示される。
そういった意味で、これは現代的なお伽噺と言えるかもしれない。
しかし、このオハナシ、けして甘々なファンタジーではない。


幼い頃に両親を亡くし、その後は二人きりで暮らしてきた
姉『より子(片桐はいり)』と
弟『進(向井理)』。

弟は、昔自分がやってしまったあることが原因で
姉が人生に臆病に
更には自分の面倒を見る為に婚期が遅れているのでは、と
心配している。

一方の姉も、弟が、最近恋人と別れてしまったことを気にし、
なにくれと元気づけようとしている。


物語はそんな二人の日常を、
過去のメルクマーク的な出来事をカットバックで挟み
時に可笑しみを持って、
時にペーソスを盛り込みながら
優しい眼差しで描写する。


幾つか盛り込まれる印象的なエピソードは
個人についてではなく、何れもが
姉を、弟を、どれだけ慮っているかの内容に終始し、
互いの思いが観客の側に伝わる工夫がされている。

ただ二人が、自身の職業故に巡り逢う
新しい恋を予感させるシークエンスの時には
しっかりと個人のことが語られ、
観る者に対しても強烈な印象を与える。


が、話中で幾度となく語られているいるように、
一方的な気遣いは、却ってその相手の為にならないのは、
我々も現実社会で幾度となく経験すること。

それが説教臭くなく、しかし
じんわりとココロに染み入るのだが、
この姉弟は居心地の良いコクーンのような小さな家から
何時か巣立つ日が来るのだろうか。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆★。

それにしても『片桐はいり』は嵌っている。
実際は齢五十を超えているはずなのに、
なんの違和感もなく、役に成り切っている。

彼女なしには、本作の企画は
有り得なかっただろう。