RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

レッド・ファミリー@チネチッタ川崎 2014年10月23日(木)

封切り三週目。

席数107の【CINE 1】の入りは七割程度で
思いの外、ヒトが入っている。

イメージ 1


監視社会なるものは甚だ不都合だ。
ある人達を監視するモノ達、
そして更にそのモノ達を監視する人達、更には・・・・と
際限がなく繋がって行く。

その労力を他に使えばもっと建設的なコトができるだろうに、
体制維持の為には、それが必要と確信しているらしい。


本作の主人公は、
韓国で幸せな家族を演じる北朝鮮のスパイ。

祖父-夫婦-娘からなる一家は、
傍目から見れば儒教的な礼節を重んじる理想的な暮しながら、
その実態は諜報活動や要人の暗殺に余念がない。

しかし、実は赤の他人である関係は
互いに見張り見張られで、気が休まる暇がない。

不用意な発言は自分ばかりか、
本国に残され、半ば人質とされている実の肉親の生死に直結する。


そんな彼等の隣家は、全くの影(あ、逆か。彼等が影か)。
夫婦喧嘩や親子喧嘩は日常茶飯事。何時も口汚く罵り合い、
長幼の序を重んじることも無い。
ましてや、隣家の前にゴミを捨てるなどはお手のもの
モラルも欠如している。

北朝鮮の一家は韓国の家族を資本主義の走狗とし、
激しく唾棄する。


が、やがてニセ家族の間がらに変化が兆す。

言いたいことを自由に言い合う関係が、
自分達の境遇と引き比べた時に、
物資の豊かさとは別にして自然に思えて来る。

それがラストのシークエンスに繋がって行く。
このシーンは、涙なしには見られない。

自分達が一度でイイからやってみたかったコト、
それを半ば本気で、半ば演技でする姿は
胸が締め付けられるほど切ない。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆★。

北の倫理が南の世界に次第に囚われて行くのは、
主人公達に限らないことが
幾つかのエピソードを重ねることで語られる。

人間関係に普遍的なことは何なのか。

それは少なくとも
自分の素性を秘匿するために(心ならずも)した
反体制的な発言をすら責める体制に
忠誠を誓うことではないだろう。