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平櫛田中コレクション―つくる・みる・あつめる―@東京藝術大学大学美術館 2014年10月4日(土)

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本館地階の、しかも【展示室2】だけを使い
今月19日(日)まで開催されている。

それにしても、この入場者数の多さはどうしたことだろう。

老若男女、相当数が会場内に押し合い圧し合いし、
計二十点の作品を取り巻いている。


ただ、確かに数は多くないのだが、密度は濃いのだ。
なので、このような会を無料で開催してしまう同大に対しては
「いよっ。太っ腹!」と、思わず声を掛けたくもなろうというもの。

タイトルにもあるように『田中』本人の作に加えて、
自身の趣向にあわせた蒐集品が、それも{木彫}を主体にして並んでいるわけだから、
通底するものはあっても、作家各人による表現の違いが十分に味わえる。


入り口正面には『金子篤司』による〔好日〕がお出迎え。
ほぼ等身大と思われる晩年の『平櫛田中』本人を写した作品。

杖を突き、躰をやや傾けて、タイトルの通り好々爺然としている。


一番奥には、『伝 光琳』の〔秋草図屏風〕を背に、
平櫛田中』の〔三井高福像〕が背筋を伸ばし、椅子に坐している。
長く伸びた白い髯からは、こちらも老齢の主人公。
しかし、烏帽子を着け正装した姿と共に、
きっと結ばれた口に鋭い眼光は、大店の当主であった威厳を
未だに持ち続けている。


この二体が、ほぼ一直線に見通せる展示の仕方、
頗る気が利いている。


そして展示の仕方と言えば、作品は勿論素晴らしいのだが、
平櫛田中』作の〔鏡獅子試作〕だろう。

『六代目 尾上菊五郎』が裸で踊りの練習をしたという、
その見得を切った一瞬を活写している。

二の腕や脹脛の筋肉の盛り上がり、
指先まで行き届く神経。

今にも次の所作に移りそうな躍動感。

それを丁度舞台を仰ぎ見る程度の高さに設えた台の上に置き、
下から見上げる仕掛けを施すことで、より力強さが体感できる。

素晴しい。

眼を凝らせば、躰の各所に細かい毛や血管も画き込まれ、
最近の細密画を彷彿とされる精緻な描写。

多くの人が、足を停め、魅入っている。