RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

とらわれて夏@TOHOシネマズシャンテ 2014年5月14日(水)

封切り二週目。
席数190の【CHANTER-3】は八割程度の入り。
客層は中高年の女性が圧倒的。

イメージ 1



ボストン郊外に息子『ヘンリー(ガトリン・グリフィス)』と
二人きりで住む『アデル(ケイト・ウィンスレット )』は
連れ添った夫に去られたことで、精神にも変調をきたし、
半ば引きこもり状態。

一方の息子は、父親の代役を務めようとするが、
体力もスキルも不足で、忸怩たる思いをしている。

或る日、週に一度のスーパーへの買い物の際に、
殺人罪で収監されたいた刑務所から脱獄をした男『フランク(ジョシュ・ブローリン)』から
息子を庇い、言うがまま、自宅に連れ戻る。

そこから三人の奇妙な同居生活が始まる。


原題は〔Labor Day〕。9月の第一月曜日でアメリカの
祝日に定められている。

また、彼の国の新学期は、やはり9月からなので
8月末は学年末の休み。子供が登校せずとも不思議ではなく、
この季節感が物語全体を貫く伏線として効いている。


突然の乱入者である『フランク』は体躯は厳めしいが、
実は優しい男。しかも、母親と息子きりの家族形態に
ある思いがあることが追々明らかになる。

『ヘンリー』の立ち位置は、もうちょっと複雑。
得ることができなかった実の父との時間を(擬似的に)取り戻せる期待と、
愛する母を取られてしまうのではないかとの焦燥。

『アデル』の行動は直截的。
その優しさに触れ、更に家宅の様相が変って行くのを目の当たりにし、
短時間で男に惹かれて行く。
ただ、この背景には「吊り橋効果」もあるかもしれないが・・・・。


話中では、その周辺の事情が、ある時は比喩的に、
ある時は直接的に描かれ、そのメリハリの付け方が
何ともこなれている。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。

本編中に、三人がテレビで映画を観るシーンがある。
その時のタイトルは〔E.T.〕。
これが頗る意味深。

何となれば、形式は異なるにしろ
家族の中に異物が侵入し信頼を得て行くプロセスは
全く共通だから(勿論、それ以外の流れも極めて近似している)。

この時期の『スピルバーグ』作品では、
父性の不在が色濃く、
事件が起きることで、それが
何らかのカタチで代謝される。

本作で描かれる幾つかの離別が
彼の映画同様、極めて幸せなものなのも同様だ。