RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

白ゆき姫殺人事件@チネチッタ川崎 2014年3月31日(月)

封切り三日目。
席数488と大きい【CINE12】の入りは二割程度。

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長野県の国定公園内で若い女性の刺殺焼死体が発見される。

テレビ局の映像下請け製作会社で(俗に言うところの)
トップ屋のように動いている『赤星(綾野剛)』の元に、
警察の事情聴取を受けたという元カノからの連絡が入り、
『赤星』はその情報を基に取材に動き出す。

やがて容疑者として浮上してきたのは
被害者の同僚『城野美姫(井上真央)』。

『赤星』は周辺の人物からインタビューを重ね
その映像がワイドショーで大きく取り上げられたことから、
『城野美姫』犯人説の世論が形成されていく。

果たして『城野美姫』は本当に真犯人なのか。


かなり、面白かった。
そして色んな意味で笑いもし、そして怖気をふるった。

伝聞や思い込みだけで、
キケンな世論が形成されていく過程は、
現実の世界でもお馴染みのところ。

しかし、暫らく経てば、我々は何事も無かったかのように
それを忘れ消費して行く。

SNSの拡大が、そのことを更に加速する。
ネット世界の住人達は、自分が常に正義であるように、
見方が正しいかのように振る舞う。

本作はそのあたりをかなりアイロニカルに描写する。


冒頭『赤星』が事件で知り得た情報を
ツイッターに随時書き込むことには
かなり違和感を覚えたが、中途から、
これこそが全体を貫く仕掛けであったことに気づかされる。
計算され尽くしているのだ。


種別としては「巻き込まれ型」に分類されるだろうか。
勿論、巻き込まれるのは『城野美姫』である。

自分の知らない処で、
「・・・・と聞いている」とか
「・・・・と思った」等のあやふやな証言だけで、
人となりが勝手に造り込まれる。

周囲の言説には、何の信憑性も無いのに、
恰もそれが正しいかのように流布する。

加えて被害者は所謂「美人OL」、嫌疑をかけられているのは
目立たない地味な同僚と来れば、
これはもう、それだけでステレオタイプ
善:悪に近い反応を(我々だって)してしまう。


『赤星』が重ねるインタビュー映像を見、
ツイッターに書きこまれる文書を読み続けることで
『城野美姫』が名前とは裏腹の鬼女ではないかとの疑念が
ふつふつと湧いて来る。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆★。

ただ、そんなポピュリズムに満ちた世相を風刺している作品とは
あまり取りたくはない。

そして
『城野美姫』本人のモノローグでさえ、それがホントのことなのかと
疑心暗鬼になってしまうのは、変な意味での本作の手柄だろう。