RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

小さいおうち@109シネマズ木場 2014年1月27日(月)

封切り三日目。

席数235の【シアター1】の入りは三割程度と
平日の昼下がりにしては良く入っている方ではないか。

客層は六十代以上が九割で、
夫婦連れも居れば、男女が個人での来場も居る。

イメージ 1


米沢から東京に女中奉公に出てきた
『布宮タキ(黒木華)』が働くのは
大森の高台にある赤い屋根の小さな洋館。

そこでは、妻『平井時子(松たか子)』、
夫『雅樹(片岡孝太郎)』、息子『恭一』が、
不自由の無い生活をおくっていたが、
夫が会社の部下『板倉正治吉岡秀隆)』を連れて来た事から、
家庭内に小さな波紋がさざ波となって広がって行く。


物語は現代の、老齢となった『タキ(倍賞千恵子)』が
過去を回想しながら自伝を書く体裁で語られる。

そこに、もう一人の狂言廻し『タキ』の親類筋に当たる
『健史(妻夫木聡)』が絡むことで、ハナシに厚みが増す。

戦前~戦中の時局を上手く挟み込みながら、
同時代の中流家庭の暮しを余すところなく描き切る。


オープニングは「大船調」を彷彿とさせるもの。
景色が数カット映り、次第に人物へと移行して行く。

前作の『東京家族』もそうであった様に、
かなり意図的に戦後間もない頃のタッチで描こうとする試みに見える。


それにしても、全体的にかなり凝った映像だ。
ある時はセピアに、ある時は濃い色に、
場面に応じて、その色調が自在に変化する。

また『本城直季』の写真を彷彿とさせる、
ミニュチュアセットにも見える撮り方をすることで、
もう一つの主人公となる家の小ささを際立たせてもいる。


尺の割には、小品じみた趣き。

若干説明過多の部分もアリ、
もうちょっと観客の側に委ねる造り方もあったのでは、と思うが
全体的にはまずまず良く出来ている。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。

しかし、本作の一番の手柄は
黒木華』のキャスティングだろう。

丁度話中の『タキ』と同年代の彼女が、
昭和っぽいぺったりとした面立ちで
甲斐甲斐しく演じているのには好感が持てる。

所作もそうだが、科白も鼻濁音が多く感じ、
演じる側はさぞかし大変だったろう。