RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

藁の楯@109シネマズ川崎 2013年4月29日(月)

公開四日目。

席数121の【シアター3】は満席の盛況。

客の年齢は高めに振れ、
やや男性が多目。


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護送中の犯人(または証言者)を襲う、強奪する
と言ったモチーフは、
旧来から繰り返し描かれて来たところで、
それは一部の利害者を
どう設定するかが作品のキモなのだが、
本作は、全国民が行為者となる可能性がある点で極めて斬新。

何故なら、孫娘を殺された資産家の『蜷川(山崎努)』が
犯人である『清丸(藤原竜也)』の殺害に10億円の懸賞金を掛け、
それを大々的に公表したから。

大金が『清丸』を襲う動機付けとなり、
それは警察の人間とて例外では無い。

冒頭、事件の経緯と、
身近な人間さえ信用できなくなるエピソードが
畳掛けられる様に描かれ、
警護を任された二人のSP
『銘苅(大沢たかお)』『白岩(松嶋菜々子)』でなくとも、
周囲の全てに対して不信感を持つようになる。

また『清丸』の性格付けも極めて明快。
どうしようも無い、人格的欠落者として描かれ、
本当に彼は守るに値するのかと、
後々の展開に効いて来る。
藤原竜也』が「人間のクズ」と称される
サイコパスを好演。
この演技は素晴らしい。


思いもかけない場所で、
思いもかけない手法を使い、更には
思いもかけない人物が襲撃者となるのは常套手段だが、
疑心暗鬼に捉われた主人公達の想いとは別に
殺害の依頼主である『蜷川』の権力が
思わぬところまで及んでいる描写にも
驚かされる、心憎い脚本となっている。


基本的な骨法として、
守る側が一人、また一人と脱落して行く経緯と共に、
各々の人間が何故集められたのかも
各人が背負う背景と共に、緻密に描き込まれる。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆☆。

十三人の刺客〕では、
(やはり、異常性格者を)攻める側を描いた『三池』監督は、
今度は守る側の心理を執拗に撮り、やはり傑作。
現時点での邦画ベストワンと見る。