RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

THE GREY 凍える太陽 @チネチッタ川崎 2012年8月23日(木)

先週土曜の封切りで、
本日の入り具合は、
席数191の【CINE 10】が三割方と少々淋しい。

男女比は9:1。加えて単身客が大多数。
カップルの姿も散見されるが、それも高齢者比率が圧倒的。

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『オットウェイ(リーアム・ニーソン)』はアラスカの石油掘削会社に雇われたプロのスナイパー。
狙撃対象は、土木作業員を狙う飢えた「狼」。
しかし、最愛の妻に去られてからというもの、
彼のココロには大きな穴が開いた様になっている。

休暇を利用しての、アンカレジまでのフライトの最中に
搭乗機が氷原に墜落する。
生存者は数名。
やがて夜になり、狼の群が襲ってくる。

夜明けを待ち、『オットウェイ』はこの窮地から脱出する決意をする。


目にも寒い、加えて背筋も凍る、
この季節にピッタリの映画だ。

原作は『イーアン・マッケンジー・ジェファーズ』のショートストーリ。
作者も脚本に名を連ねている功だろう、
生存者達の背景が大きく膨らまされ、ストーリーに厚みが増している。
生に強く執着する者、逍遙と死を受容する者、虚勢を張る者、
夫々の生きてきた証が提示される。

本作で感じる恐怖は、極めてプリミティブだ。
自然の猛威と獣の暴力。
人類が太古の時代から向き合い、克服してきた
それらが渦巻く環境に、主人公達は、最低限の装備だけで、
ぽ~んと放り出される。
人工的に創られた、クリーチャーとは異なる、
我々が持っている遺伝子に直接響いてくる怖さ。

『オットウェイ』が、かくも生き抜くことに執心する理由としての
幼少期の体験、妻との関係がカットバックで示され、伏線となり、
ラストシーンの、ある重要な決断へとなだれ込む。

エンドタイトル後に、取って付けた様に挿入されるエピソードは
賛否両論有るようだが、
自分的には、これはアリ。
先の決断への回答が、このシーンで提示されているのだから。


『リドリー』と『トニー』の『スコット』兄弟が製作者に名を連ねている。
直近の彼等の情勢を省みるにつけ、何とも言えない思いが込み上げて来る。