RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

安藤正子―おへその庭@原美術館 2012年8月16日(木)

ふう、暑い熱いと汗を拭きながら、
【御殿山】へのだらだらとした坂を上る。

できるだけ日陰を選んで移動はするが、
気温自体がとんでもない。

こんな日に、こんな駅から離れた美術館には
そう多くの人は来ないだろうと高をくくっていたら、
いやはや、何とも、妙齢の女性達でかなり混雑している。

男性の姿も散見されはするが、殆んどが彼女等に
引っ張って来られたであろう人達で、
自分の様に、おぢさんが独りきり、と言うのは、
全く見かけない。

イメージ 1

一般の入場料は、1,000円
「ハラドキュメンツ9」のサブタイトルがある。
+「原美術館コレクション」も鑑賞できる。


寡作の人である。
過去発表されたのは、たったの十点。

で、描き溜めた十二点を含む、今回の展示が
計十九点だから、
殆んど、回顧展と言っても良い趣き。


静謐である。

油も鉛筆も、画面からは何の音も聞こえて来ない。
ホースから水が噴出していても、それすらも
刻が止まっているかのようだ。


鈍く、輝いている。

美しい色達が、鮮やかに広がって行く。


浮き立っている。

周辺が僅かに滲むことで、
乳白色の背景から
描かれた人物が眼前に迫って来る。


精緻である。

例えば、描かれた毛糸のセーターを見ると良い。
キャンバスに直接糸を編み込んだ様に見えるほど、
その質感の描写はただ事ではない。

動物の毛皮、鳥の羽、少女の髪の全てに、
それは当てはまる。


不可解である。

〔スフインクス〕と題された、一作。
その女性の髪形は、確かに「スフインクス」のそれである。
しかし、緩やかにテーブルの上に置かれた手を仔細に見れば、
不釣合いなほど大きく、しかも指には毛まで描き込まれている。

本展のタイトルにもなっている〔おへその庭〕。
そこに描かれた幼児の足は、異様に大きく大人びている。


そういった、解の無い混沌が、
鑑賞者を捕らえて離さない。

幾ら観ても、厭きるということがない。

画が持つ、妖しい力に、魅入られてしまった様だ。


会期は~19日(日)まで。