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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

裏切りのサーカス@品川プリンスシネマ 2012年6月16日(土)

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席数219の【シネマ5】は四割程度の入り。
客層はやや高齢、カップルよりも一人客が多い。
でも、ミステリー好きには、是非、と
おススメしたい一作。


舞台は東西冷戦下のイギリス。
「英国情報部(=サーカス)」内に、
ソ連の二重スパイ(=「もぐら」)が居ることを確信した
組織のリーダー『コントロールジョン・ハート) 』は、
彼を炙り出す作戦に出るが失敗、引退を余儀なくされる。

同時に組織を追われた『スマイリー(ゲイリー・オールドマン)』だが、
『コントロール』の後を継ぎ、「もぐら」を捜し出せとの密命を受ける。

ターゲットは、組織最高幹部の四人。
その中の誰が「もぐら」なのか?


実は、非常に丁寧に作られている一本。


極小の登場人物だけで成立していた前作に比して、
本作は人物も多量、場所や時間も、自在に飛び回る。
ため、脚本も含め、相当な苦労をしただろう跡が窺がえる。

加えて、外国人の名前や外見は、
我々のパターン認識には馴染みが無い。
なので、かなり、不親切な作品に、感じてしまう。


終盤に至るまで、時系列的な整理をするために、
頭は緊張しっぱなしなのだが、
多少の記憶の綻びはすっ飛ばして、
緩やかに、物語の流れに身を任せる鑑賞法が
正しい在り方のようだ。


伏線は至る処に張られている。

後で、タネを披露されると、
「ああ、あれがそうだったんだ」と
既視のシーンを思い起こそうとする。

それよりも、結末を踏まえた上で、
最初から見直した方が、監督が映像に込めた仕掛けが、
きちんと発見できるかもしれない。


原題は〔Tinker, Tailor, Soldier, Spy 〕。
中途で明らかにされることだが、
タイトル自体に「もぐら」の存在は暗示されている。

最初から手の内を明かしつつも、
太い物語の骨格と、絡み合う人間ドラマを描写する
ジョン・ル・カレ』作品の映画化は、
直近の〔ナイロビの蜂〕を含め、外れが無い。