RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

八日目の蝉@TOHOシネマズ川崎 2011年5月14日(土)

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席数114と、さほど大きくは無い【SCREEN8】の入りは
それが故か、八~九割程度と盛況。

客層は、性・年齢を問わず幅広い。


妊娠した愛人の子を堕胎したことが遠因で、
子供の産めないカラダになった『野々宮希和子(永作博美) 』は、
その妻が産んだ子供を発作的に誘拐し、
『薫』と名付けて育て始める。

しかし、それは、何時発見されて、
子供を取り戻されるかもしれないという
恐れとの戦いでもあった。

『和子』は多くの人に助けられながら、
逃避行を続ける。


成長した『薫』は本名の『恵理菜(井上真央)』に戻っているが、
両親との仲もしっくりとはいかず、
大学生になったのを機に、家を出て自活している。

そんな彼女の前に、取材と称して『千草(小池栄子)』が現われたことで、
『恵理菜』は心の中に封印していた、
『和子』と暮らしていた『薫』としての
四歳までの記憶に向き合うことになる。


登場人物の殆んどが、かなりエキセントリックな性格付けをされているのだが、
小池栄子』の存在が、物語に厚みを与えて、
この人、何時からこんなに良くなったんだろうと
まず感心。


現時点での『恵理菜』の生活、
過去の『和子』の生活が、最初は本人の視点で描かれる。

『和子』の逃避行、
『千草』に促されて出立する『恵理菜』の過去の記憶を
辿る旅、
二重のロードムービーになっているわけだが、
途中挟み込まれる、『和子』が誘拐に至った経緯や
『恵理菜』のイマの描写も、
その切り替えが間断無く、かなり上々の出来。

濃密な愛情を他人から注がれていた期間の記憶が
次第に自分のモノとして想起されるようになり、
『薫』と『恵理菜』が交錯する一瞬は、
ムネがグッと締め付けられる程の感慨がせりあがり、
近来希に見る上質のシーンになっている。

血の繋がりよりも、
愛情を以って育てられたことによる影響が
その仕草や行動に反映されていることも
随所で描かれ、
人間の関係性ってなに?
と、考えさせられる提起にもなっている。


二時間強の尺を感じさせない、
素晴しい本作は、現時点で
今年観た邦画のナンバーワン。
必見の一作。