RollingStoneGathersNoMoss健啖部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

英国王のスピーチ@TOHOシネマズ六本木ヒルズ 2011年4月14日(木)

「TOHOシネマズデイ」でも、
平日の朝イチの回の入りはこんなものか。
644席とかなり広い【SCREEN7】は、
空席ばかりが目立つ。

アカデミー賞」受賞作とは言うものの
上映七週目。
何時までも、こんな大きな劇場に掛けておいて
ペイするのかと、他人事ながら心配になる。

客層はかなり幅広い。

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ヨーク公コリン・ファース)』、後の『ジョージ6世』は、
幼い頃からの吃音に悩んでいた。
日常生活にはさほどの不便は感じないものの、
改まった席や公の場では、言葉が出なくなる。

周囲や国民さえそのことは承知で、
妻の『エリザベス妃(ヘレナ・ボナム=カーター)』も
様々な療法を試してみたものの
芳しい成果は得られない。

やがて『エリザベス妃』は知人から紹介された
言語療法師『ライオネル・ローグ(ジェフリー・ラッシュ)』
の元を訪れる。
そこは、
エレベータも満足に動かず、ソファは摺れ切れ、
水漏れの音が始終する
古びたアパートの一室だった。

彼の元に通うようになった『ヨーク公』。
最初は反発するものの、
次第に治療の成果が見え始める。

そのままでいれば何の問題も無かったのだが、
兄である現王(エドワード8世)が、『シンプソン婦人』との
所謂「世紀の恋」により退位する。
先ずは戴冠式の、そして、それ以降も、
公式の場でのスピーチは彼を苦しめる。

時は、第二次世界大戦前夜。
英国は「ナチス」と戦闘状態に入り、
国王は宣戦布告の一世一代のスピーチに臨む。


只でさえ難しいであろう吃音の演技を
不自然さを微塵も感じさせない、
コリン・ファース』が素晴しい。

それは、オープニングの、
何処かしらおどおどとした態度と、
エンディングの自信溢れる振る舞いの差が
外見だけでなく、内面から漂って来る
オーラの異なりさえ感じさせてしまう。

吃音の治療方法も(ホントかどうかは知らないが)、
思わずニヤリとさせられ、
中途の場面転換の手法も気が利いている。

一方で、存在する「クラス」の差を圧倒的に感じさせたり、
個人の諍いや妬み、嫉み、苛めが、
そんなこととは関係無しに存在する実情も描かれ、
次第に吃音の原因はそれらの幼児体験に在ったことや、
『ローグ』は何者でも無かったことも明らかになる。

が、そういった障害を乗り越え、
二人の結びつきは強固なものとなって行く。
その過程の語り口が、なんとも上等。


過去の「アカデミー賞」作品と較べて、
飛び抜けているとは思えないが、
鑑賞に十分耐え得る、
しかも、心が暖かくなる秀作である。