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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

おにいちゃんのハナビ@109シネマズ川崎 2010年10月10日(日)

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朝一回だけの上映ということか、終映間近のためか、
それとも「109シネマズの日」の故か、
席数130の【シアター3】は八割方の入り。
客層は、親子連れ、カップルと、男女比がほぼ半々。


個人的には、かなりの期待を持って臨んだのだが、
観終われば、その通りの良作。
今年観た中でも頗る上位に位置づけられる。


「実話」とか「泣ける」という惹句が氾濫する、
映画・出版業界ではあるが(本作も両方をキャッチに持ってきているのだが)、
そんなフレーズは全く不要なほどのウェルメイドストーリ。


高良健吾』が優柔不断な『須藤太郎』にピタッとはまり、
間逆の性格の『須藤華(谷村美月)』との対照を上手く描写。

全編を通じて、気の利いた台詞や遣り取り。
奇を衒わない落ち着いた、しかし、
所々、「おっ」と思わせるカメラワーク。

兄弟の性格の違いや、この家族が今の状態になった背景を、
交互に繋いでさらっと見せてしまう編集の冴え。

前半に笑わせ、後半に泣かせどころを持って来る、
いわば定石通りの造りながら、あざとさは一片も無く、
素直に物語の世界で泣けてしまう。

しかも、「妹」が死ぬことはあくまでも契機で、
その後の「おにいちゃん」の行動と、
触発された周囲の善意が畳み掛ける波状攻撃。
少々ずるいけど、結構気持ちよく涙が流れてしまう。


終章ではエピソードを構成する全ての人に関連付ける「花火」が用意され、
成る程【片貝】の花火とはその為に有ったのだと、再認させる流れも又良し。

半分は彼女見たさの『谷村美月』は常の通り好演。
判ってはいるものの、オープニングシーンではぎょっとさせられ、
が、頭を丸めてしまう役者魂にも感じ入る。
外見を含め変えることができないアイドル系の人達が跋扈している中、
より貴重な存在と思わせる。

ちなみに、本作での方言の描写は、
極力最小限に抑えられているようだ。