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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、健啖部の活動報告。文化活動履歴の「文化部」にも是非お立ち寄り下さい

悪人@みゆき座 2010年9月14日(火)

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改装後の本館には初めて来た。
学生時代は良く通ったものだが、
一体、何十年振りだろう。

それにしても面白い造りだ、
スカラ座】のスクリーン真裏に、
丁度横になる様に造作されている。

従って、席数は183と小さいし、
床面もフラット、スクリーンの位置もさほど高くはないので、
あまり観易い劇場とは言えない。

が、そんな中、「シネマズデイ」の効果か、
それとも「主演女優賞」の受賞故か、
平日の午後にも係わらず、席は七割がた埋っている。

元々、女性向けの映画を多くセレクションして来た小屋だけあって、
客層は、カップル(夫婦含む)、母娘連れ、女性の二人連れが圧倒的だが、
さて、この映画は、果たしてそうなのかな?


一方の主人公『馬込光代(深津絵里)』はロードサイドの紳士服チェーンに勤める。
本人の言葉を借りるなら「小・中・高・社会人と同じ国道(と自分の家)を往復している」。
佐賀県のほんの狭いエリアだけで生活が成立している。
加えて彼女は車を持っていない。
田舎暮らしには車が必須で、今は、一家に一台はおろか、一人に一台の時代。
一部屋のアパートに複数の駐車場が併設されているのが当たり前。
それが無い彼女は、移動の自由さえ、持ち合わせていない。

もう片方の主人公『清水祐一(妻夫木聡)』は土木作業員。
彼女とは違って車を持っているのだが、なまじ人が良いばかりに、
その用途は、近所の老人達の通院の足代わり。
工事現場-病院-食事-風呂と言った、味気ない生活を繰り返す毎日。
長崎の漁師町の「どんづまり」に住んでいる。

被害者の『石橋佳乃(満島ひかり)』は久留米の実家には寄り付かず、
福岡市内で保険の外交員をして生計を立てている。

そんな三人が「出会い系サイト」で繋がり、
悲劇は起きる。


地元が醸し出す、逃げることのできない閉塞感。
都会への憧憬。
複雑な感情がない交ぜになる。

『光代』の『祐一』に対する感情も直線的ではない、
実はエゴむき出しの自分本位のものである。

「逃避行」とも言えない、狭い範囲での逃亡劇。
フィルム・ノワール 」の仮面を被った
実は「純愛」物語と観たがどうだろうか。

そして、最後迄観終わって、誰しもが思うのだ。
果たして『祐一』は本当に”悪人”なのか?と。


追記-
この監督、音の捉え方が頗る上手い。
環境音を意図的に取捨選択する。
シーン毎のインパクトにメリハリを与えている。